食べること 生きること~歯医者と地域と食支援 五島朋幸
医療・健康・介護のコラム
男性高齢者、図書館通いが止まると、要介護の危険が迫る!
中川譲二さん(72、仮名)は午前10時前、いつものように服を着替えて外出の準備をします。そしてテレビがちょうど10時の番組に切り替わると同時に、「お母さん、行ってきます」と言って出かけます。
週5日、きっちりと時間通り。玄関を出ると万歩計をリセットして歩き出します。目的地は市立図書館。譲二さんはあえて最短距離ではなく、少し遠回りして向かいます。10分ほどで行ける場所にありますが、20分かけて到着。まずは、いつものように新聞コーナーに陣取ります。周りを見るといつも同じような顔ぶれ。同年代の男性ばかり。
退職後、日課の図書館通い、妻は友達とランチ
一通り各紙に目を通すと、昔から好きだった歴史小説のコーナーに。特に新刊は入ってないようです。今まで読んでいなかった本を何冊か走り読みします。そして気に入った本を探し出し、閲覧コーナーに腰掛けてじっくり読み始めます。少しお 腹 が 空 いたころに腕時計を見ると12時半。「よしっ」と軽く声を発して、読んでいた本を貸し出しコーナーに持って行き、1冊借りて帰路につきます。帰りは10分そこそこ。譲二さんが会社を退職して2年、ほぼこのような生活をしています。
帰宅すると妻の智子さん(仮名)は出かけるところです。「お父さん、お昼ごはん、出してあるから食べてね。私、これから篠崎さん(仮名)の奥さんとランチに行きますから。夕方には戻りますね。お父さん、午後はどこにも出かけないでしょ。夜はうちで食べるわよねぇ」
「あぁ」。智子さんは外出着を身にまとって外に出ます。譲二さんはジャージーに着替えて、借りてきた本を片手にソファに深く座りました。
高齢男性たち、図書館に通えるうちは元気だけれど
さもありなんという図書館通いの習慣。これは、健康の基礎である栄養摂取にも役に立っています。
様々な高齢者向けのイベントが開かれていますが、参加者に圧倒的な男女差が発生します。とにかく男性の参加者が少ないのです。都会と地方では違うかもしれませんが、都会では大問題です。生まれ育った場所ではないところに住み、仕事をしている間は、地域のコミュニティーとは無縁です。現役を引退すると、地域に知り合いがいないという事態が発生します。引退後にいろいろなお付き合いを広げていく方もいるのですが、女性に比べ、そのようなことができる男性が少ないのは想像できるでしょう。そして行き着く先が図書館なのです。
平日の日中、図書館には現役を引退した世代の男性が多く集まります。しかし、基本的にはコミュニケーションの場ではありません。逆にそれが心地よくて男性が集まっています。問題はここからです。月日が過ぎて体力が低下すると、図書館に通う頻度も低下します。毎日だったのが週1回から月1回へ。そして図書館通いが終わります。
図書館を卒業すると外出の頻度が減ります。そうすると食生活が乱れます。特に自宅から出ることもなく、運動量が減っていますから1日3食が2食になったり、時間がまちまちになったり。食事量が減るとたんぱく質などの摂取が減るので、筋力低下が著明になります。次第に歩行が困難になり、最後は寝たきり状態になってしまいます。
図書館を高齢者のコミュニティー作りの場に
この負のスパイラルに入らないようにするためにはどうすればいいのか。僕は、図書館でのコミュニティー作りだと考えています。「地元史研究会」「経済討論会」「政治を語る会」や「パソコン自作の会」など、男性の興味を引くものはたくさんあるはずです。そういう目的があれば、コミュニティーができます。男性が図書館に行く意欲を維持できれば、素晴らしい介護予防であり、栄養の支援にもつながるのです。
デイサービス通いを拒否する男性は少なくありません。多くの男性にとって、みんなとおしゃべりをしたり、歌を歌ったり、体操をしたりというのは楽しみではありません。図書館の役割を少し変えると、高齢男性が通い続けたくなる施設になるのではないでしょうか。(五島朋幸 歯科医)
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男性の図書館通い、賛成です。私の近所?電車で2駅の大学図書館は、年2000円で地域に開放されています。単位履修生で10年通いましたが。その後履修を辞めた後に、利用させて貰っています。65才定年退職後、沢山の方々、主に男性。近頃は女性、ご夫婦とバラエティーに富んできました。夏休み利用者は、断然男性群。おかーちゃんに、いってらっしゃ!と送られ、夫婦円満の秘訣です。ついでに昼ごはんもたべてきてねー!それ位、気を使いましょう、男性陣。一人に成ったとき、困るのは、あなたよー。映画の「ニューヨーク図書館」ではパソコンを地域の住人に貸出、勿論講習会も開いていました。図書館が地域住人に、もっと開放、認知される事を!
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