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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと

コラム

大人の男女、抗加齢に大切なのは思いやり

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大人の男女、抗加齢に大切なのは思いやり

 20年前、NPO法人アンチエイジングネットワークを立ち上げた時、真っ先に賛同してくれたのが、大学の同級生で現在は札幌医大の名誉教授、熊本悦明君です。熊本君は泌尿器科医で、男性の更年期治療の旗振り役として頑張っていました。「男の抗加齢は俺に任せろ。女はお前に任せる」と言われ、僕はありがたく女性専科に徹することにしました。

 これまでの医学は男性のデータが中心で、女性の医学が必要と僕も感じていたからです。最近では「性差医学」と言って、高脂血症や血圧の治療なども女性のデータを基にした治療が言われるようになってきました。そして2人で相談して、NPO法人アンチエイジングネットワークのモットーとして「幾つになっても男と女」を掲げることにしました。男と女が別々に抗加齢に励むだけでなく、共同作業をする方がはるかに楽しく効果的であろうという発想です。言ってみれば「ペア文化」の推進ですね。

2週間の海外旅行で、夫婦ともにストレスが溜まる

 その時思い出したのは50年前のローマでの出来事です。パリでの形成外科の国際会議を終え、日本から参加した形成外科医のグループで10日ほどヨーロッパ見物の旅に出ました。ドイツ、スイスと回り、最後にローマの終着駅で特急に乗り込んだ時のことです。

 1組の日本人夫婦がホームで 喧嘩(けんか) を始めたのです。もう発車間際なので、皆でその夫婦を列車に押し込み、事なきを得ました。その夜、 馴染(なじ) みの添乗員が僕にこう漏らしました。ご夫婦は2週間も一緒にいたことがなかったので、ストレスが () まってしまったそうです。滑稽でしたが、ちょっと悲しくなりました。これが日本の夫婦の実態なのかと。

 当時、僕はまだ若手の勤務医。配偶者は子育て中。経済的にも夫婦でヨーロッパ旅行など、夢のまた夢でした。しかもパリの国際学会では、楽しみのための行事もたくさん用意されていたのですが、全ては夫婦同伴が前提。欧米のペア文化に感嘆したばかりでした。学会だけでなく、レストランもペアを優先させます。一人で行くと歓迎されません。

抗加齢に必要なペアの文化は思いやりから

 「幾つになっても男と女」と掲げた時は、欧米流のペア文化を意識していました。大人の男女の付き合いというくくりで考えようということですね。では、大人の男女の付き合いとは? 人によって様々な形があっていいのではと僕は考えます。まず異性として相手を意識すること。価値観や物事の感じ方や考え方は個人でも違いますが、男女にも大変に大きな違いがありますね。たとえ長年連れ添った夫婦でもそうです。価値観の違いを楽しみ、良い関係を作るには、どんな場合でも相手を思いやることが最も大切だと言えましょう。2人で楽しい時間を過ごそうという気持ちが、時にはお洒落心につながるかもしれません。相手のお 洒落(しゃれ) 、そして美しさを () でる言葉も自然と出てくることでしょう。

性ホルモンは生きる意欲を保つために必要

 人間は互いに惹かれあうようにできています。フロイドが言うリビドーは平たく言えば性欲ですが、生きる意欲と言い換えてもいいかもしれません。熊本名誉教授によれば、この時に重要なのがテストステロンを中心とした性ホルモンです。つまり性ホルモンは生殖に必要なだけでなく、人間が生きる意欲を保つために必須な要素と言えます。

 年を取っても惹かれ合うのは決して恥ずべきことではなく、これこそ若さの証です。ですが、お付き合いで、思いやりに欠けるところがあるとすれば、それは恥ずべきことかもしれません。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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