森本昌宏「痛みの医学事典」
医療・健康・介護のコラム
骨粗鬆症予防 閉経後にカルシウムは効果薄…女性を救うのはあの伝統食!?
ギックリ腰の原因として挙げておかなければいけないものに「 骨粗鬆症 」がある。骨粗鬆症とは読んで字のごとく、骨が「粗く」、大根に「 鬆 」が入ったような状態になることを指す。「体」は正字で「體」と書くように、本来は豊かで強固な骨によって支えられている。骨が老化とともに徐々にもろくなるのはやむを得ないが、それが正常範囲を超えて進行するのが骨粗鬆症なのだ。
「落穂拾い」の痛々しさ
今や、この骨粗鬆症の患者さんは1000万人を超え、さらに増加の一途にある。圧倒的に中高年の女性に多い。これには、女性の骨が元来 華奢 であること、閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下などが影響している。また、副腎皮質ステロイド薬を使用している方、甲状腺機能に障害がある方でも、本症を生じることが多い。
骨粗鬆症になると、さまざまな部位で骨折を起こしやすくなる。3大骨折と呼ばれる「脊椎圧迫骨折」「とう骨遠位端骨折」「 大腿 骨 頸部 骨折」などである。なかでも脊椎圧迫骨折の発生頻度が高い。たとえば、尻餅をついた後、急に起きる背中の痛みや腰痛は、背骨が瞬間的につぶれ、骨の周囲にある神経が刺激されたのが原因である。
一方、慢性的な背中~腰の痛みの原因は、背骨の変形である。もろくなった背骨が日常動作により徐々につぶれ、身長が縮んだり、背骨が曲がって 前屈 みの姿勢(脊柱後 彎曲 と呼ぶ)となったりする。前屈みの姿勢では、上半身を持ち上げようと背中の筋肉が異常に緊張し、筋肉内の血の流れが悪くなり、神経が悲鳴をあげるのである。
この前屈みの姿勢による体への負担に関しては、ミレ-の「落穂拾い」の絵を思い浮かべていただきたい。激しい労働に耐えている姿が痛々しく、背景の豊かな収穫がそれを際立たせている。わが国においても、機械化が進んでいなかった時代には、農村の多くの女性が、この絵に描かれたような姿勢で長時間働き、慢性的な背中~腰の痛みに悩んでいたことは想像に難くない。
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