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ケア技法「ユマニチュード」…「優しさ」伝え 笑顔に

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 フランスで生まれた認知症などのケアの技法「ユマニチュード」が広く活用されるようになってきた。研修の受講者はこれまでに1万人近くに上り、医師や看護師の教育に取り入れる大学も増えた。研究を進め、この技法をさらに普及させるため、今年7月には学会が発足した。(竹井陽平)

ケア技法「ユマニチュード」…「優しさ」伝え 笑顔に

  認知症対策に導入

 ユマニチュードは40年前、フランスで体育教師だったイブ・ジネストさん(66)らが考案した。「あなたは私にとって大切な人間です」とのメッセージを伝えるため、〈1〉見る〈2〉話す〈3〉触れる〈4〉立つ――の基本行動を重視する。

 例えば、「見る」場合は近くで正面から水平に相手の瞳を捉える。「話す」では「体をふいています」「きれいになったね」などと、状況を説明しながら前向きな言葉をかけ続ける。

 この間、弱い力で柔らかく、相手に「触れる」ことも並行する。可能であれば、細切れで「立つ」時間も確保し、全身の筋力の衰えを防ぐ。1日合計20分を目標にする。

 日本には2012年、国立病院機構東京医療センター総合内科医長の本田美和子さんが導入。趣旨に賛同した有志が集まり、技法を学ぶ研修が行われている。これまでに看護師や介護職員ら9300人以上が受講し、全面的に取り入れる病院や福祉施設は65に達した。

 研究成果も報告されている。福岡県久留米市の聖マリア病院では、集中治療室の全看護師が技法を学ぶと、患者を身体拘束する割合は半減し、せん妄の発生率は5分の1に下がった。

 また、福岡市は16年末、市内の認知症患者の家族介護者を対象に、ユマニチュード研修の実証実験を行った。その結果、暴言や 徘徊はいかい などの症状が軽減し、家族の負担感も低下したとして、市はまちぐるみの認知症対策にこの技法を導入した。

 実験に参加した大津省一さん(76)は、11年前に認知症と診断された妻・信子さん(80)を介護してきた。心身ともに疲れきっていたという。技法を学んで、生活は一変した。大津さんはどなることがなくなり、夫婦ともに笑顔が増えた。手をつなぎ散歩をする姿に、近所の人からは「ラブラブですね」と声をかけられる。

 その後、大津さんを含めて20人が改めて市の研修を受け、地域リーダーに任命された。今年8月には、地域住民や子どもたちに認知症とユマニチュードの基礎を教え始めた。

  医師教育にも活用

 教育に組み込む大学も増えた。旭川医大、岡山大、長崎大、奈良県立医大の4大学は医師教育の一環として教え、群馬大は来春導入する。富山県立大は今年4月に新設した看護学部のカリキュラムの目玉に掲げる。

 また、基本行動をIT技術で測定したり、自閉症スペクトラム障害の子どもへの有効性を検証したりする研究が京都大などで進んでいる。研修を実施する企業は受講者が遠隔で再び学べるアプリを開発した。

 7月には日本ユマニチュード学会が発足し、医療者や看護関係者らが加入している。学会代表理事に就いた本田さんは「ユマニチュードは、きちんと学べば誰もが実践できる。学会として技術の質を保ち、しっかりとした仲間作りの受け皿になりたい」と話す。

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