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「ちょい忘れ」は認知症の始まり? その原因、深刻度、改善策
よく知っている人の名前が出てこない、好きなドラマのタイトルを忘れてしまった……。きょうのテーマは「ちょい忘れ」。認知症の始まりかな、と不安に思っている方も多いと思います。2012年時点で認知症の発症者は465万人、そして予備軍が400万人といわれていますが、果たして、ちょい忘れは認知症の前兆なのでしょうか。(司会・右松健太キャスター)
朝田隆(あさだ・たかし) 東京医科歯科大学特任教授。認知症の実態調査・治療に30年以上携わる
工藤千秋(くどう・ちあき) くどうちあき脳神経外科クリニック院長。脳疾患・認知症など39万人以上を治療
覚えていることを引き出せない
右松 そもそも、ちょい忘れの原因は?
朝田 記憶というのは、3段階に分かれると言われます。まず聞いたこと、読んだこと、それを覚える、インプットする。その上で必要なとき、例えば、この俳優は誰だっけということになったときに、それを記憶の中から引き出してくる、このような段階に分けられます。ちょい忘れというのは、覚えてはいるんだけれども、さあというときに引き出すことができない。それをよく、ちょい忘れと言っていると思います。
右松 どの部分が衰えているから、起きるんでしょうか。
朝田 さまざまな部分が関わるわけですが、ここに「側頭葉」というのがあり、その奥に「海馬」があります。この部分がインプットにも引き出しにおいても重要です。
久野静香アナウンサー 加齢によって衰えるものなんですか。
朝田 もちろん年齢も大きいですね。トレーニングも結構重要ですよ。
右松 工藤さん、このあたりどうでしょうか。
工藤 箱はいっぱいあるんだけど、どこの引き出しだったか忘れてしまうとか、そういうことがよく原因じゃないかと思いますね。どの引き出しだったか、ネーミングがされていたら覚えやすいじゃないですか。その引き出しに書かれているネーミングがぼやけてきてしまうということで、老化かなと思いますね。
右松 そうすると、このちょい忘れというのは、お年寄りのほうが増えてくるんですか。
人間の記憶は芋づる式 加齢とともに弱まる連想力
朝田 これは絶対にお年寄りのほうが増えます。よく例えられますけれども、人間の記憶はコンピューターの箱のように縦横があって、そこに何の記憶が入っているというものではないんです。よく芋づると言われますが、ひとつサツマイモをとったら、茎を引っ張っていくとゴロゴロ出てくるみたいに連想が働くわけです。その連想の働く力は、確かに弱まるなと思います。
館林牧子・読売新聞医療部長 人の顔は忘れないのに、どうして名前だけ忘れるのかなといつも不思議に思うのですが……。
朝田 顔については、顔細胞というものが人間にはあるぐらいなんですよ。人の顔を覚えることに特化した細胞があり、顔とか景色とか、そういうものを覚えるのは主として右側の脳。それに対して、人の名前とか文字とか言語を覚えるのは左なんです。アルツハイマーは割と左のほうがよりやられることが多い、というような左右差があるので、そうした現象もあるだろうなと思います。
単に注意力不足の場合も
久野 ちょい忘れみたいなものは、私は20代とか若いうちから経験があって、何か物を取りに行ったけれども何を取りに来たのか忘れてしまうとか、あるんですが、脳が老化してきているということですか。
朝田 いや、それは単純に注意の問題だと思います。
久野 そもそも、ちょい忘れと記憶力が悪いというのは別のものなんですか。
朝田 一般的に言う記憶力というのは、どれだけキープしているかですよね。覚えたつもりでもボロボロ抜け落ちていないか。要するにテストで100点をとるためには全部キープしていなくちゃいけないわけですよね。それを普通、記憶力が良いという。
右松 男女差はあるんですか。
女性に目立つ「ちょい忘れ」
工藤 そうですね。女性の方がやはりちょい忘れが多いと思います。統計学的なものはありませんが、そもそも認知症は女性の方が多いと言われています。ですので、我々のクリニックでも、ちょい忘れで「おかしいな」とお見えになる方は女性の方が多い印象はありますね。
右松 生活習慣も関係していますか。
工藤 そうですね。やはりバランスのよい食事や運動ができず、閉じこもってしまうような傾向の方は、ちょい忘れが多いんじゃないかなと思いますね。
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