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のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

病院においてある意見箱(投書箱)って?

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「病院にトイレがない!」

 きょうのカフェはにぎやかだ。ほぼ満席だったが、カウンターにはまだ空席があったので、そこに座り、コーヒーを注文した。時々カウンターで顔を合わせることのあるご婦人が隣に座っていた。どうやら、マスターののぶさんを相手に、通院先の病院の愚痴を言っているようだ。

 「病院にトイレがないなんて、おかしいですよ!」
 いや、トイレが「ない」わけはないだろうが、横で彼女の話を聞いていると、トイレの場所がとてもわかりにくくて、病院の中を歩き回り困ったということらしい。病院へ一言文句を言ってやりたいという口調で息巻いている。

 のぶさんは、私が注文したコーヒーをドリップしつつ、そのご婦人へ話しかけた。

 「その病院には、意見箱や投書箱がおいてありませんでしたか?」
 自分もこれまであまり意識したことはなかったが、ある程度の規模の病院ならば、当たり前のように患者が病院に対して意見をできるようになっているようだ。ホームページから意見を送れる病院もあるらしい。大抵は、管理職もその内容に目を通すらしい。

 のぶさんは、話を続ける。

 「意見がおありなら、ぜひ具体的に書いてあげてください。例えば、何階のどのあたりでトイレを探したのだけれど、どこにも案内の表示が見つからなくて、探して歩き回る羽目になった……とか」

 なるほど。

 「そのうえで、具体的に、どんなふうに改善してほしいのかも提案してみてはいかがでしょうか?」

具体的な改善方法の提案をしてみる

病院においてある意見箱(投書箱)って?

意見・投書箱は、玄関や会計の辺りにある病院が多い

 確かに苦情やダメ出しばかりしても、よい解決策が生まれるとは限らない。自身もカフェの経営者であるのぶさんらしいアドバイスだ。

 予算や人手の問題もあるだろうから、なんでもかんでも実現できるわけではないだろう。しかし、病院の職員では気づかないこともある。一緒になって、その病院をよりよくしていこうという意見が、きっと私たちが医療を受けやすい環境を作るのだと思う。

 今回のケースなら、たとえば1階の外科の診察室の前で待っていた際にトイレに行きたくなったのだけれど、案内の表示がみえなくて困った。各待合室の天井にトイレの案内表示をつり下げてはどうだろうか、という感じだろうか。

 「さらに……」

 ご婦人は 身体(からだ) を前のめりにしてのぶさんの話に耳を傾けている。

 「感謝の気持ちや、よかった点も投書してほしいんですよね。私も飲食店をやっているので、インターネットに口コミを書かれることがあります。褒められるとテンションが上がって頑張れるけど、ダメ出しだけされるとその日はやる気が () せちゃうんです」

患者が病院をよくすることで得られるもの

 のぶさんの通う病院では、患者が投書した内容と、病院からの回答がセットにされて、掲示されているという。のぶさんが見た感じでは、無理難題の単なるクレームも多い。どんな意見でも出せるとは言っても、一方的なクレームばかりでは建設的な改善につながるかは疑問だ。

 私の会社でも後輩を育てる際に、ダメ出しばかりではなく、「褒めて伸ばす」という観点が重要だと私も教育を受けた。さっきも、企画書を出してきた新人に「よく書けている」と褒めてきたところだ。

 「患者自身も病院を構成する一員であるという発想が、巡り巡って、自分が受けられる医療をよりよくするんですよねぇ」

医療側と患者の双方が作りだす病院の風土

 このカフェも同じだ。のぶさんたちが提供するカフェそのものも 素敵(すてき) だけれど、このカフェに集うお客さんたちもそれをうまく受け入れ、そして雰囲気を作っている。この店を穏やかに、そして楽しい時間を作っているということだろう。

 そう言えば、居酒屋やホテルなどでは、よくアンケートがテーブルに置かれている。車のディーラーで点検を受けた後などにも、感想などを書いて 投函(とうかん) してもらうアンケートのはがきが渡される。インターネットの普及で、口コミとして自由に書き込めるケースも増えてきた。

 患者や家族が、お世話になった医療者に感謝の気持ちを伝える手段としても、それらは使える。みんながお互いによい面を確認し、気持ちよく仕事ができる環境を作る。そんな風土があったら、病院で働く人もそこに通う患者も楽しいよな。

 帰宅してパソコンを広げたら、のぶさんのカフェについて、ちょっと口コミを書いてみようか。のぶさんのコーヒーは頭をすっきりさせてくれる。なにを書くか考えただけでワクワクしてきた。(鈴木信行 患医ねっと代表)

 下町と言われる街の裏路地に、昭和と令和がうまく調和した落ち着く小さなカフェ。そこは、コーヒーを片手に、 身体(からだ) を自分でメンテナンスする工夫やアイデアが得られる空間らしい。カフェの近所の会社に勤める49歳男性の私は、仕事の合間に立ち寄っては、オーナーの話に耳を傾けるのが、楽しみの一つになっている。

(※ このカフェは架空のものです)

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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1件 のコメント

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モグラタイジ

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約3年半前、市内の大きな病院にて診断の結果肺がんと言う事になりました。セカンドオピニオンと言う言葉が以前から気になつていたのもあり、診断直後に当院の癌支援相談センターにセカンドオピニオンに付いて相談したところ、夕方になつて折り返し自宅に電話がありました。内容はお考えは変わりませんか?さらに自院の良い所の説明をされました。セカンドオピニオンと言う言葉が浸透していないのか?
不安な気持ちと疑問が入り混じり今でも医療というものに不安があります。

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