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医療・健康・介護のコラム
子どもの「指しゃぶり」 やめさせた方がいいの?
子どもの「指しゃぶり」はさせていいのか、やめさせた方がいいのか。「おしゃぶり」はよくないのか。診察室で聞かれることは多くありませんが、出前講座に行った先で相談されることは結構あります。
「病気じゃないので、病院で聞くのも……」と思うのかもしれません。しかし、医療者が思っている以上に、不安に思う保護者は多いのでしょう。ネットで調べると、色々な意見が出てきて、余計に迷います。
この問題については、以前から、「自然に改善するから様子を見てよいのでは」という小児科医と、「歯並びに影響が出るから、極力、早めに対応しなくてはいけない」という歯科医でアドバイスに温度差がありました。そのため、保護者が相談しても、より混乱してしまうと言われてきました。
そこで2003年、小児科医と小児歯科医の意見を調整する場として「小児科と小児歯科の保健検討委員会」が発足し、以来、共同で小児科医と小児歯科医の総意としての見解を公表してきました。その成果をまとめた「子どもの歯と口の保健ガイド」※1)が09年に作られています(2019年に改訂)が、その内容は、あまり一般の人に知られていません。
今回はおしゃぶりや指しゃぶりへの対応について、この保健ガイドの内容を踏まえてお話しします。
正常な発達の一部
赤ちゃんの指しゃぶりは、お母さんのおなかの中にいる在胎24週頃からみられることが知られています。超音波エコーなどで、しゃぶっている様子を産婦人科の先生に教えてもらった方もいるかもしれません。生まれてすぐに母乳を飲むための準備ともいわれており、これは正常な発達の一部ともいえます。
正常な発達の一部とはいえ、デメリットもあります。それは、前歯が前に出る(いわゆる「出っ歯」)ことや、 開咬 (口を閉じても上下の前歯の間に隙間ができる)など、歯並びに影響が出る可能性があることです。口呼吸、舌足らずな発音などの要因になる可能性も指摘されていて、指を吸う頻度が高かったり、長期間にわたる場合などでは、より影響が出るかもしれません。
また、汚れた指をなめることで、「感染症になりやすいのでは?」と思われるかもしれません。指しゃぶりで爪周囲炎など、指に感染症を起こしたという報告はありますが、調べた限りでは、指しゃぶりをしている子が胃腸炎や肺炎にかかりやすいという報告はなさそうです。
3歳までは見守りの姿勢でいい
「うちの子、まだ指しゃぶりしている、どうしよう!」と思っている人がいるかもしれません。でも、ご安心ください。指しゃぶりの頻度は、年齢とともに下がっていくことが分かっています。1歳半で指しゃぶりをするお子さんは約30%ですが、3歳児では20%、5歳になると10%というデータがあり※2)、自然に改善することが多いのです。減っていく理由ははっきり分かりませんが、「子どもの歯と口の保健ガイド」には、指しゃぶりをしていると、「つかまり立ち」「伝い歩き」「一人歩き」などの発達過程がスムーズにいかないためではないかという記載があります。
幼児期以降になると、昼間の指しゃぶりは減っていき、眠いときや退屈なときのみになっていきます。この傾向も、積み木を積んだり、人形を抱っこする行為が指しゃぶりの卒業と関係しているのではないかと考えられています。
このように、指しゃぶりは通常4~5歳になるとかなり減るとされていて※3)、「子どもの歯と口の保健ガイド」でも、3歳までは基本的に見守りの姿勢でよいとしています。4~5歳を超えても続く場合には対応を検討します。6歳以降も頻繁に指しゃぶりしている場合は、自然に消失しないことも分かっており、小児科医・小児歯科医・臨床心理士に相談した上で積極的に対応することになります。
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