「続・健康になりたきゃ武道を習え!」 山口博弥
医療・健康・介護のコラム
空手を長く続けるには休む勇気も大切 体の故障は神様からのメッセージ
10月6日の昼過ぎ。東京・恵比寿の恵比寿ガーデンプレイスは時折、小雨がぱらついていた。
センター広場のステージに登場したのは、極真空手総本部代官山道場の道場生たち。子どもたちを中心に、基本の突きや蹴り、逆立ち歩行、開脚、型、自由組手、試し割りを披露した。 裂帛 の気合とともに繰り出す技の迫力に、集まった観客たちは大いに沸いた。
毎年恒例のイベント「恵比寿文化祭」での一コマだ。




膝の痛みで演武のステージに出られず

客席からステージの仲間の演武を見つめる上田さん
そのステージに、「極真空手LOVE」を公言する道場生、上田 奏 さん(46)の姿はなかった。いたのはステージではなく、客席の側。椅子に座り、仲間の演武を見ながら拍手を送っていた。
「あ~、出たかったなあ~」
上田さんの口から思わず、ため息が漏れた。
実は、9月上旬から右膝に痛みを感じるようになっていた。歩けないほどの痛みではないが、何か違和感がある。空手の稽古で傷めた記憶はない。もしかしたら、愛用の自転車のスタンドを足で立てる動作で膝に負担がかかり、痛みにつながったのかもしれない、とも思ったが、本当のところは分からない。
整形外科でマッサージを受け、 鍼 治療も受けたら少し良くなったので、恵比寿文化祭の演武には出るつもりだった。何しろ入門して以来、演武には欠かさずエントリーし、先輩たちと一緒にステージに立っていたのだから。
多忙な中で年117回の稽古 右足の使い過ぎ
この時の整形外科医の見立てによると、「右足の使いすぎ(過負荷)から来る疲労と捻挫で、膝関節の周囲が炎症を起こしている」らしい。
悩んだ末、恵比寿の演武と、10月20日の昇級審査はパスすることに決めた。空手を始めて2年が過ぎていたが、初めてのことだ。
「考えてみれば、当然なのかもしれません」
長年、運動らしい運動をしたことのない人間が、いきなり年に117回も稽古に行って、組手では得意技である右の蹴りをバシバシ出していたのだから。しかも、渋谷で会社を経営し、自分1人で2人の子を育てる忙しさの中での稽古だ。膝が悲鳴を上げるのも無理はない、と思った。
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最低限のフィジカルと基礎の先にあるもの
寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受
「相手のサイドバックからボールを奪うにはセンターフォワードの右足を狙う」とかサッカーの素人に言っても、理解不能でしょう。 同じ一般人に理解不能な...
「相手のサイドバックからボールを奪うにはセンターフォワードの右足を狙う」とかサッカーの素人に言っても、理解不能でしょう。
同じ一般人に理解不能なら、「CTの腹水の色から病変の部位を探し当てる」を遂行しろとか言われそうです。
そこにある個人の中の文脈、個対個の文脈、集団の文脈を考えると、常人からすればエスパーにしか見えないことができるということです。
サッカーでも、画像診断でも、どうやって実行フェーズまで体に染み込ませていけるか、仮にAIやITが発達しても、人間としての課題は残るでしょう。
格闘技も基礎ができたら、徐々に、戦術や心理のウエイトが大きくなってくるでしょう。
そのきっかけは、たいてい怪我やスランプです。
そして、そういうロジックや努力は半分共通で、それがスポーツや武道のもう一つの価値です。
僕もいくつかの故障がありますが、膝が一番堪えますね。
他の部位と違って、他の筋肉とかで誤魔化しにくいからかもしれません。
感情と酒量の制御が難しくて、整形外科疾患とメンタルヘルスやQOLについて考えさせられます。
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