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山崎まゆみの「心もとろける癒やしの温泉」

コラム

二日酔いにもいい!? 焼酎の温泉割りが美味しい!? 胃腸に効くと伝わる湯治場

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江戸時代から今に伝わる湯治の文化

 いつの頃からでしょうか、温泉が余暇(レジャー)の要素を色濃くしていったのは。
 日本に西洋医学が入ってくる前は、温泉は医療や薬の役割を果たしていました。神だのみに近い意味もあったようで、いまでも古い温泉地には温泉が (まつ) られた温泉寺や温泉神社が残っています。

 江戸時代に入ると、湯治が一大ブームになりました。農閑期には馬で食料を運び、自炊しながら、最低10日から2週間ほど滞在。湯に入り、体を整えたのです。

 当時の人々は、現代以上に、温泉を上手に活用した様子がうかがえますし、私たちもその知恵を活用したいものです。

江戸時代から今に伝わる湯治の文化

 霊峰蔵王の山の懐に抱かれるような宮城県の秘湯・ 峩々(がが) 温泉。江戸時代に開湯し、その後、「胃腸の湯」として、明治時代に宿を創業。湯治場として栄えました。湯治土産として流行した、地域特有のこけしも、当時の名残です。

 そんな峩々温泉を守っているのは、開祖者から6代目に当たる竹内宏之さん(44)。

 私が初めて峩々温泉を訪ねたのは10年ほど前。その時の竹内さんは、お若いはずなのに、文字通り「 湯守(ゆもり) (源泉管理などをする人)」としての責任を全身で背負っている印象でした。

 到着早々の私に、こう指示するのです。
 「お風呂はぬるい湯と熱い湯の2種類あります。まず、ぬるい湯に10分程入って、その後、熱い湯の湯船横に寝ころび、竹筒で湯を () み上げて胃腸辺りに100杯かけてください。それが古来からの入浴法です」

 当時の私には、入浴と言えば湯に () かることしか知りませんでした。新鮮な印象を抱いたのをよく覚えています。

おなかにかけたら、じんわりと

おなかにかけたら、じんわりと

 早速、大浴場に行くと、4~5人程入ることができる湯船の横に、木製の枕と竹筒がありました。まずは少し茶褐色の湯に入浴して体を温めます。肌触りはやわらか。

 それから湯船の縁に寝ころびます。カルシウムやナトリウム等のミネラルがこびり付いた床はザラザラしていますが、湯船からあふれ出た温かい湯が背中をじんわりと温めてくれます。

 言われた通り、竹筒を手に、湯を汲み上げて、腹部にかけてみました。
 すると胃腸辺りが温まってくるのです。肌だけでなく内臓が温まる感覚は、他では味わったことのない不思議なものでしたが、まぁ気持ちのいいこと。こうして一点集中で温めることの効果を初めて知りました。

 湯から上がると、竹内さんが昭和時代の頃の峩々温泉の写真を見せてくれました。湯船の周りに人が連なり、空き缶を片手に湯をかけている姿が写っていました。

ミネラル豊富でかみしめたくなる味のお湯

 話を伺っていると、夕食の時間になっていました。
 食事前に飲泉をすすめられました。

 「食前に1日200ミリリットルを目途にゆっくりと飲んでください」という竹内さんの指示通りに、フロント横にある飲泉所で温泉を口にします。人肌程の温度で、ミネラル成分が豊富だからか、思わずかみしめたくなる口当たりでした。

ミネラル豊富でかみしめたくなる味のお湯

 「峩々の湯を焼酎で割るとおいしい」「飲泉してから酒を飲むと、二日酔いにならない」と言う常連さんも多いそうです。

 お酒を飲まない私にとって、どんなにたくさん食べても胃もたれしなかったのは、飲泉の効果でしょうか。食欲の秋ですしね!

 そうした峩々の湯の力を信じているのが竹内さんです。
 東日本大震災では峩々温泉も被災したのですが、旅館の復旧後は、湯治による被災者支援を実施しました。竹内さんが子供の頃に臨海学校でお世話になった、宮城県石巻市小竹浜の高齢者の方々をマイクロバスで迎えに行き、峩々温泉に連れてきました。

湯守の竹内さんと一緒にパチリ

湯守の竹内さんと一緒にパチリ

 実は、私もこの湯治支援は同行させてもらいました。被災地での不自由な暮らしが長くなり、疲れた表情だったおばあちゃんの顔が、湯治でみるみる緩んでいく様は、今も脳裏に焼き付いています。

 「観光で行く温泉旅行は放電ですが、湯治は充電です。だから湯治文化を継承したい」と竹内さんは話します。

 一方で、「若い世代にも受け入れやすい湯治スタイルを模索中です」と、夏はソーセージとビールをふるまう湯治プランを実施するなど、新しいアイデアも打ち出しています。

 ちなみに、湯治を体験した20代カップルは、みんな「癒やされる~」と言って帰っていくそうです。

峩々温泉

峩々温泉
【所在地】〒989-0901 宮城県柴田郡川崎町大字前川字峩々1
【電 話】0224-87-2021
【泉 質】「ナトリウム 炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」
【効 能】慢性消化器病、慢性便秘、ストレスなど
【アクセス】東北新幹線「仙台」駅からバスで70分、「アクティブリゾーツ宮城蔵王」へ。そこから送迎(事前連絡が必要)
【ホームページ】https://gagaonsen.com/index.html

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yamazaki_mayumi_prof

山崎まゆみ(やまざき・まゆみ)
温泉エッセイスト、ノンフィクションライター、VISIT JAPAN大使、跡見学園女子大学兼任講師。世界32か国1000か所以上の温泉を巡り、「温泉での幸せな一期一会」をテーマに各メディアでリポートしている。『続・バリアフリー温泉で家族旅行』(昭文社)等著書多数。最新刊は『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!』(河出書房新社)。内閣官房東京オリンピック競技会・東京パラリンピック競技会推進本部事務局「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会」「ユニバーサルデザイン2020評価会議」に参画し、日本の「バリアフリー温泉」の推進に力を注いでいる。温泉情報はTwitter、FB、インスタグラムで更新中。

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