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なつかしスポット巡り

回想サロン

童心に帰るおもちゃの歴史を巡って~バンダイミュージアム(栃木県・壬生町)

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 栃木県の県央南部に位置する壬生町には、東京の下町地域にあったおもちゃの工場が昭和30年代に移転してきて、一つの工業団地を形作りました。その一角に、大手おもちゃメーカーのバンダイ(本社・東京都台東区)が設立した「おもちゃのまち バンダイミュージアム」があります。

 北関東に位置する栃木県は、東京にお住まいの方には遠いように思われがちですが、壬生町までは新宿から電車に乗って約1時間半ですので、週末、気軽に家族連れで日帰りができる所にある博物館です。バンダイが手がけた博物館といっても、メーカーの枠を超えて広く国内外のおもちゃを収集していて、主に戦前から現代に至るまでのおもちゃの歴史をたどることができるスポットです。

ガンダム胸像が出迎え ずらりと並ぶブリキのおもちゃ

 

入り口にあるガンダムの胸像

 原寸大のガンダム胸像が出迎える入り口を過ぎ、最初のエリアである「ジャパントイミュージアム」に足を踏み入れてみましょう。そこには、ずらりと並ぶブリキのおもちゃ。団塊の世代の方々には懐かしい品々ではないでしょうか。車、船舶、飛行機、ロボット……戦後の日本、占領軍からスクラップを払い下げてもらって作り始めたブリキのおもちゃは、外貨獲得の重要な商品になりました。

「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の文字表記のある玩具

「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の文字表記のある玩具

 一角には、占領下の日本が輸出したおもちゃで、「MADE IN OCCUPIED JAPAN」と書かれた貴重なものがあります。敗戦から昭和27年までの占領期しか製造されていなかったことから、マニア垂涎すいぜんの玩具です。ミュージアムの鈴木勝館長は「世界中の収集家が珍しいものとして追い求めている希少なものです」と話します。

世界で最も高価なブリキ玩具「5人のギャングシリーズ」

世界で最も高価なブリキ玩具「5人のギャングシリーズ」

 このほか、度肝を抜かれるのは、世界最高値のブリキロボット「5人のギャングシリーズ」です。高さ30㌢ほどのロボット1体あたりなんと800万円! ミュージアムは5人のギャングのうち3人分を所蔵、展示しています。たかがブリキと侮ることなかれ。世界のマニアが今も血眼で探しているそうです。読者のあなたの物置小屋にも眠っていませんか?

国内で初の「品質保証玩具」 トヨペットクラウンも

 このコーナーには、バンダイがまだ萬代屋と名乗っていた頃の昭和30年に製造したトヨペットクラウンもあり、国内で初めて「品質保証玩具」として発売したものだそうです。「安かろう、悪かろう」の時代から、品質保証をするようになった時代の象徴と言えるでしょう。「この頃から、壊れない自信を持った商品を世に出せるようになったのだと思います」と鈴木館長。翌年の昭和31年の経済白書で「もはや戦後ではない」と高らかに宣言した時代背景が、おもちゃの歴史からも伝わってくるかのようです。

初めての品質保証付きの玩具

初めての品質保証付きの玩具

 ほかにも、タカラトミーの初代「プラレール」(昭和34年)もあり、今もヒット商品であり続けている列車玩具の原点が、ここに見られます。

仮面ライダー、ウルトラマン、ゴジラ…主流となったキャラクター玩具

 日本初のキャラクター玩具である「鉄腕アトム」のおもちゃが誕生したのが、昭和39年。東京五輪の年です。そして、昭和40年代から、キャラクターものの玩具全盛時代となりました。

 そのコーナーには、スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマン、ゴジラなどの様々なキャラクター玩具が所狭しと並んでいます。鈴木館長は「日本のおもちゃの歴史は、キャラクター玩具とゲームの二つの大きな流れがあります。特に昭和40年代からは、主流がキャラクターおもちゃとなり、親子二代どころか、三代にわたって愛されているキャラクターも珍しくありません」と解説してくれました。

 この時代を境に、ブリキのおもちゃは姿を消していきます。おもちゃの歴史に大きな転機が訪れたのです。キャラクターものではないおもちゃとしては、けん玉や女の子が遊ぶクッキングセットなどがありますが、キャラクター玩具が主流であるという傾向は、現代に至るまで続いているそうです。「テレビゲームがあるじゃないか」と反論する向きもあると思いますが、そのテレビゲームの中で活躍しているのもキャラクターです。今もって、おもちゃ業界はキャラクタービジネスが主流で、テレビや映画など様々な権利ビジネスによって、収益を上げる仕組みになっているのです。

超合金のおもちゃ「マジンガーZ」からテレビ・電子ゲームへ

超合金の玩具の数々

超合金の玩具の数々

 ちょっと小難しい話になったので、足を先に進めましょう。目の前に現れたのが、超合金の「マジンガーZ」です。第1号は昭和49年に発売が始まりました。鈴木館長に超合金の意味を尋ねると、「ロボットの硬さ、重量感を出すために作った造語ではないでしょうか。いまだに現役の言葉で使われ続けています」との説明でした。確かに、超合金という表現は、巨大ロボットキャラクターなどを言い表すにはぴったりです。超合金のおもちゃも様々なキャラクターで使われました。

テレビゲーム機などが玩具の歴史に変革をもたらした

テレビゲーム機などが玩具の歴史に変革をもたらした

 そして、昭和50年代に入ると、テレビゲームや電子ゲームの時代に入ります。任天堂の「ファミリーコンピューター」などのテレビゲーム機で遊んだ世代も、既に団塊ジュニア世代でしょうか。考えてみれば、この種の玩具も息の長い商品です。もっとも今はデジタル時代。ゲーム機が進化する一方、スマートフォンでゲームを気軽に楽しめるようになりました。時は移り変わります。

モンチッチ、バービー人形、リカちゃん人形…女の子向けも充実

 ジャパントイのコーナーでは、女の子向けのおもちゃの収集物も充実しています。

女の子向け玩具は郷愁を誘う

女の子向け玩具は郷愁を誘う

 モンチッチ、バービー人形、リカちゃん人形……筆者は男性記者ですが、それでも懐かしいおもちゃの数々です。見ているだけで、子供時代に立ち返ったような気分になります。郷愁を誘われるとでも言うのでしょうか。もはや戻らない時代を慈しむ心が、湧き起こってきます。

 ままごと遊びのコーナーには、電話機やミシン、レンジ、レジスターなどがありました。ここで涙腺が緩んだことを正直に告白します。子供が楽しめる博物館ですが、ここまで来ると、もはや懐かしさに浸る大人向けなのでは……とまで思いました。老若男女問わず、誰でも楽しめるのが、この博物館の長所です。

 館長の一押し 発明家の魅力伝える「エジソンミュージアム」

 博物館にはほかにも、世界のおもちゃの数々を楽しめる「ワールドトイミュージアム」や、ガンダム・ファンのための「ホビーミュージアム」があります。そして、鈴木館長の一押しは、「エジソンミュージアム」です。

 アメリカの発明王・エジソン(1847~1931)の発明品の実物や関連写真や資料、約3000点を収蔵しています。白熱電球、蓄音機、映写機など数え切れないほどの発明品が、所狭しと展示されています。一人の人間が84年の生涯の中でこれほどまでの偉業を成し遂げた、という驚きに包まれます。

エジソンの発明品の数々と鈴木館長

 鈴木館長は、「エジソンは難聴でほとんど耳が聞こえなかったそうです。そんな中で、音への関心を強く持ち、蓄音機の原理を発見しました。障害があっても、ポジティブな方向へ持っていく生き方が素晴らしいと思います。もう一つは、エジソンには、その発明を支える製図の専門家などの仲間が常にいたことで、発明は一人でできるものではなく、仲間の支え合っての成果だということです」と、彼の魅力を語ります。

 そして、ミュージアムを訪れる人々に、エジソンの魅力を館長自ら語りかけているそうです。「涙を流して聞いていたお年寄りがいたので、理由を聞くと、障害を持つお孫さんをお持ちとのことでした。そうした人々に少しでも力になれたらとの思いで館を運営しています」と話します。

 おもちゃで童心に帰り、エジソンの発明品に勇気をもらい、足取りも軽やかにミュージアムを後にしました。実は記者がこの地を訪ねたのは3度目。何度訪れても楽しく、新鮮な発見のあるスポットだと思います。それともう一つ、大事な情報を忘れていました。営利目的でなければ、写真撮影は全館OKです。フェイスブックやツイッターに情報を出すのも自由。お好きなおもちゃを写真に収め、世に発信するのも一興かもしれません。

 バンダイミュージアムの収蔵品の一部は、9月に発売されたDVD「よみうり回想サロン 昭和から平成編①」の中の「戦後の暮らし①…遊び」のコーナーの中で紹介しています。けん玉、ベーゴマ、おはじき…懐かしさがこみ上げます。DVDもぜひご覧ください。

(塩崎 淳一郎)

おもちゃのまち バンダイミュージアム

【所在地】栃木県壬生町おもちゃのまち3-6-20
【電話】0282-86-2310
【アクセス】北関東自動車道「壬生IC」から車で5分、JR宇都宮線「石橋駅」からタクシーで15分、東武宇都宮線「おもちゃのまち駅」から徒歩10分
【開館時間】午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
【休園日】毎週水曜日、年末年始
【入館料】大人1000円、中学生まで600円、3歳までは無料
【ホームページ】 https://www.bandai-museum.jp

 

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