精子に隠された「不都合な真実」
医療・健康・介護のコラム
従来の100分の1以下の精子で体外受精が可能!…「人工卵管法」
私たちは、精子の選別や検査の高度化と、必要な精子数を極限まで節約できる体外受精「人工卵管法」を組み合わせた、新しい生殖補助医療の研究に取り組んでいます。精子の品質管理という面で問題が残る顕微授精をできるだけ回避するのが目的で、TDCプロトコール(TDCは東京歯科大学の略、プロトコールは手順の意味)と呼んでいます。
体外受精は、生殖補助医療の主役の座を顕微授精に奪われてしまいましたが、なぜ再び持ち出そうとしているのか、お話しします。
精子の頭部の「先体」を事前に検査
精子を卵子に注入する顕微授精が普及した理由の一つは、体外受精で卵子にたくさんの精子をふりかけても、「受精しなかったらどうしよう」という不安が消えないからです。そこで、精子を精密に調べて、頭部に卵子への侵入に必要な酵素が入った袋(先体)がちゃんとついているか、さらに卵子への侵入準備ができているか、など精子の状態を事前に把握できれば、体外受精に伴う不安はかなり解消されます。
培養皿のくぼみを細長い流路でつないだ人工卵管
次に、少数の精子でも体外受精を可能にするため、精子を節約する方法を考えました。従来の体外受精では、卵子が入った約1mlの培養液に元気な精子を約10万匹加えます。精子は自力で卵子にたどりつき、受精します。
私たちが開発した人工卵管とは、三つのくぼみがあるただの培養皿です。一つのくぼみに卵子を入れ、別のくぼみに選別した精子を入れます。この二つのくぼみは、卵管を模した細長い流路でつながれています。 動画 は、人工卵管の流路を泳ぐ精子です。非常に狭い空間内に卵子と精子を閉じ込めることで、従来の体外受精の100分の1以下という極めて少数の精子でも受精が可能になりました。くぼみは大中小と三つあり、卵子の数や準備できた精子の数と質を考慮して、最適な組み合わせを選びます。
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