最新作は看護学生がテーマ…ニコラ・フィリベール監督
インタビューズ
看護師の卵たちの「自分探し」を追った5か月間…最新作『人生、ただいま修行中』が公開されるニコラ・フィリベール監督
ドキュメンタリー映画『ぼくの好きな先生』などで知られるフランスのニコラ・フィリベール監督(68)の最新作『人生、ただいま修行中』は、パリ郊外の看護学校が舞台です。年齢や性別、人種も様々な新入生たちが、看護の知識や技術を学び、患者と対面する病院での実習に進むまでの約5か月間をカメラが追っています。これまでの作品で、聴覚障害者や、精神科医と患者などにスポットを当ててきたフィリベール監督が、今作のテーマに看護を選んだのには、どんな狙いがあるのでしょうか。11月1日からの日本での公開を前に、来日したフィリベール監督に聞きました。(ヨミドクター 飯田祐子)
死に直面した経験が契機に
――自身の闘病の体験が、この映画を作るきっかけとなったそうですね。
以前から、人間の身体をテーマにした作品を撮りたいという思いがおぼろげにあったのですが、どうアプローチするか、なかなかアイデアが固まらないままでした。
そして2016年、 肺塞栓症 で緊急搬送され、集中治療室で3週間ほど過ごしたのです。入院中は、自分が生き延びられるだろうかということで頭がいっぱいで、撮影の企画のことなど、一切考える余裕はありませんでした。退院して数か月がたった頃、体調の回復とともに、「看護の世界にオマージュ(敬意)をささげるような作品を作りたい」という思いが膨らんできたのです。
医療の現場において、看護は非常に重要な仕事です。それにもかかわらず、フランスでは、看護師は労働環境が非常に厳しく、社会的な評価はそれほど高くありません。そんな、ちょっと日陰の場所にいる彼らに光を当てたいと思いました。
<肺塞栓症> 脚などにできた血液の固まり(血栓)が血流に乗って運ばれ、肺動脈に詰まる病気。長時間、同じ姿勢のままでいると血栓ができやすくなることから、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれる。
――入院して治療を受けている間に、その「厳しい労働環境」を実感するような場面はありましたか?
肺塞栓症を起こすと、本当に苦しいんです。息をする度に、まるで胸に短刀を突き立てられているような痛みがあり、まさに悪夢の日々でした。看護師たちが働く姿を観察するような余裕はとてもなかったのですが、ベッドに寝たままでも、病室に出入りする看護師の素早い動きから、彼らがいつも時間に追われていることを感じ取りました。看護の仕事が激務だということは、新聞などのメディアで繰り返し取り上げられていますが、その事実を自分の目で確認する機会になりました。
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