文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」

コラム

足がつりやすく、効果のある漢方薬を毎日飲み続けたら…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 今回は、足がつりやすくなった方に起こった、市販薬の副作用の話です。

 イラスト・奥山裕美

イラスト・奥山裕美

 80代の男性。職人の方で、毎日、暑い環境で仕事をしていました。仕事中は、シャツがびしょ () れになるほど、汗をたくさんかくことが常でしたが、最近、仕事中に足がつることが多くなり困っていました。知り合いから、足がつった時の市販薬があると教わり、娘に頼んでドラッグストアで買ってきてもらい、飲んだところ、効果があったため、毎日服用するようになりました。それで、足がつることは減ったのですが、ある日、だるさが強くなり、立ち上がることもやっとの状態になったため、娘に連れられて、救急外来を受診しました。

 救急外来では、立ち上がりにくい症状のほか、血圧が高く、足のむくみもあり、緊急の血液検査では、血液中のカリウムという電解質が大幅に少ない状況になっていることがわかりました。「問診票には服用中の薬を書く欄が空白になっていますが、薬はまったく何も飲んでいませんか? 市販薬やサプリを含めて教えてください」と質問されました。

 「足がつるので市販薬を服用している」と答えましたが、製品名はうろ覚えで、持参もしていませんでした。そのため、娘さんに自宅に戻ってもらい、スマホでその市販薬について連絡をもらったところ、 (しゃく)(やく)(かん)(ぞう)(とう) という漢方薬だとわかり、「 () アルドステロン症」と診断されました。

甘草を含む漢方薬 長期連用で「偽アルドステロン症」の恐れ

 芍薬甘草湯には甘草という生薬が多く配合されています。甘草は偽アルドステロン症の原因になることがわかっており、多めに連用していたことから、診断に至りました。

 甘草にはグリチルリチンという物質が含まれていますが、その分子構造はアルドステロンと呼ばれる副腎皮質ホルモンと似ており、炎症を抑える効果のあることなどが知られています。そのため、薬効もあり、有用なのですが、長期連用することで、一部の方に副作用の偽アルドステロン症(高血圧や手足のだるさ、脱力感、むくみなどの症状がみられることのある副作用)を来すことがあります。

 厚生労働省には 「偽アルドステロン症」という患者向けの読み物 がありますので、ご関心のある方はぜひともお読みください。

 さて、今回は漢方薬に含まれている「生薬」について説明します。

 生薬は、主に植物や動物、鉱物などの自然界のものを医薬品として利用したもので、漢方薬や生薬製剤で使われています。漢方薬や生薬製剤は、生薬だけで構成されていますが、市販のかぜ薬にも含まれている製品があります。また、今回取りあげた甘草は甘い味がするため、果実加工品やスナック菓子、漬物、調味料などにも使われています。

生薬は自然界のものだから安全か?

 生薬は自然界のものだから、安全で副作用とか気にしなくてよいだろう、と思われる傾向があるようなのですが、今回のケースの甘草による偽アルドステロン症をはじめ、他の医薬品と同様、注意を必要とする副作用があります。

 例えば、甘草の他では、エフェドリンを含む麻黄(マオウ)という生薬が注目されることがあります。エフェドリンは自律神経のひとつである交感神経を刺激しますので、量を多く飲んだりすると、 (どう)() や血圧上昇の原因になることがあります。また、エフェドリンは、スポーツ競技で問題になるドーピングの禁止物質でもありますので、アスリートやその家族の方にとっては、副作用以外の注意も必要です。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

dr.hira-prof150

平 憲二(ひら けんじ)
 1966年、宮崎県生まれ。総合内科専門医。株式会社プラメドプラス代表取締役。91年、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒。2001年、京都大学大学院医学研究科博士課程内科系専攻修了(臨床疫学)。03年、京都大学病院総合診療科助手。05年に株式会社プラメド、13年に同プラメドプラス設立。著書に「クスリ早見帖ブック 市販薬354」(南山堂)、「クスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方」(PHP研究所)、「クスリ早見帖ポッケ かぜ・解熱鎮痛・咳止め・鼻炎の市販薬」(大垣書店)。

Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

なんとなく知っておきたいこと

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

長い歴史はありますが、多くの場合、漢方薬は投薬理論の異なる合剤と考える方が無難ですね。 西洋薬と漢方薬のどちらを応援するわけでもないですけど、飲...

長い歴史はありますが、多くの場合、漢方薬は投薬理論の異なる合剤と考える方が無難ですね。
西洋薬と漢方薬のどちらを応援するわけでもないですけど、飲み合わせとかは注意するべきかもしれません。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事