リングドクター・富家孝の「死を想え」
医療・健康・介護のコラム
今年の冬は大流行の兆し! インフルエンザはなぜ撲滅できないのか?
毎年のように、寒くなると危惧されるのがインフルエンザ。今年は、例年以上に大流行するのではと心配されています。厚生労働省の定点報告によると、8月下旬あたりから報告数が増えています。とくに沖縄県が多く、今後、全国的に広がるのではないかと見られています。すでに、学級閉鎖を行った学校も出ています。
インフルエンザは、こじらせると命にかかわることがあります。とくに、幼児や高齢者は免疫力が低いので、大流行の年には多数の死者が出ています。インフルエンザと言えば予防ワクチンの接種ですが、予防接種を受けていればかからないかというと、そんなことはありません。このことを知らず、予防接種したから大丈夫と思っている方がいるので心配です。
インフルエンザウイルスにはタイプがある
インフルエンサのウイルスは、A型、B型、C型に大きく分類されます。このうち大流行の原因となるのはA型とB型ですが、その中にも細かい種類があり、さらに小さな変異もあります。「香港型」などという言葉は耳におなじみかもしれません。近年は、A型のH1N1が流行の中心で、昨年は3割程度が香港型でした。
このように型が違うウイルスのどれがその年に流行するのか、予測は困難です。また、ウイルスは常に変異し続けています。しかも、同時期に数種類のウイルスが存在します。
したがって、予防接種に使われるワクチンの株がウイルスの株と一致しなければ、ほぼ効果はないのです。現在、世界で使われているワクチンは流行期の1年近く前に決定されています。
ワクチンの有効率は10~60%
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、2018年1月に、04年からのインフルエンザワクチンの有効率をまとめています。それによると、感染しなかった人が、ワクチンを接種した人の60%を超えるシーズンはありませんでした。最悪のシーズンは04~05年で、予防接種の効果はわずか10%にすぎませんでした。
はしかやおたふく風邪、風疹のワクチンの効果は、ほぼ100%です。ですから、一生のうちに数回接種するだけで効果は持続します。また、はしかウイルスは、半世紀前に流行した型と変わっていません。そのため、毎年、同じワクチンが使われています。しかし、インフルエンザはそうはいかないのです。
あらゆるタイプに効くワクチンの開発も
とはいえ、現在の技術を使えば、実は、あらゆる種類のインフルエンザウイルスに長期間にわたって効果があるワクチンの開発は理論的には可能だとされています。そのため、現在、開発に携わっている研究者もいます。しかし、この夢のワクチンの製造には、 莫大 なおカネがかかります。さらに、研究開発から治験、認可までにかかる期間は、最低でも10年が必要とされています。
予防接種以外に一般に言われている予防法に、「マスクをすること」「よく手を洗うこと」があります。手を洗うことにはある程度効果が期待できますが、マスクは、冬場の乾燥した空気からのどを守ることができ、 飛沫 を周りにまき散らさない、せきエチケットの面もあります。
予防接種には重症化予防の効果
予防接種では感染を完全には防げないとはいえ、感染後の重症化を抑える効果はあるとされています。幼児や高齢者の場合、重症化は命の危険があるので、予防接種を受けないより受けたほうがいいとは言えます。
例年、インフルエンザの流行が始まるのは、11月下旬~12月上旬です。年が明けて3月ごろまで患者数が増加し、4~5月ごろに減少するというのがパターンです。予防接種後、抗体ができるまでに2週間程度かかります、ワクチンの効果が持続する期間は、一般的に5か月ほどです。
現在、インフルエンザの予防接種は完全自己負担で、医療施設によって異なりますが、3000~4000円程度です。また、自治体によっては、幼児、高齢者に無料で実施しているところもあります。
予防接種を受けたからといって安心するのは禁物です。最近は、流行に関しては逐一報道され、厚労省や自治体も情報発信を積極的に行っています。地域の流行状況は、自治体のホームページなどで確認できるので、折をみて確認したらいいでしょう。(富家孝 医師)
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自分は体質が合わないのでインフルエンザワクチンは打ちません。 10年に一度くらい体調崩しても、毎年体調崩すよりはましですから。 しかし、これは、...
自分は体質が合わないのでインフルエンザワクチンは打ちません。
10年に一度くらい体調崩しても、毎年体調崩すよりはましですから。
しかし、これは、個人の体質に基づいた考えで、システムとしては全体向けのものがあるべきとは思います。
研究機関の予測に基づいてある程度の幅のインフルエンザの発症を抑えることができるというのは重要な事ですが、一方で、昨今の人の移動が多い中でインフルエンザウイルスの多様性も予測され、ワクチン以外の対応も考えていくべきではないかと思います。
実際、インフルエンザ以外も季節外れの流行とか起こっていますね。
そういう時の共通の対応策の共有や運用は考えていくべきだと思います。
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