天疱瘡 あちこちに水疱
昨年の夏、皮膚科で
重症度や経過に大きな差
山上 淳 慶応大学皮膚科専任講師(東京都新宿区)
天疱瘡は、自己抗体によって皮膚や粘膜に水疱ができる病気です。自己抗体とは、本来は体内に侵入してくる細菌やウイルスから身を守ってくれる抗体が、自分自身を攻撃するようになってしまったものです。なぜ、自己抗体ができるのかは、分かっていません。
大きく分けると、口、鼻、陰部など粘膜に主に症状が出る「尋常性天疱瘡」と、頭や顔、胸、背中などに赤い斑点ができて皮膚がむけやすくなる「落葉状天疱瘡」があります。国内の患者数は約6000人で、中高年に多く、男女差はありません。
患者さんによって重症度や病状の経過が大きく異なります。治療方針もかなり幅があります。口の中にできた水疱の痛みで食事が十分に取れない、全身に水疱ができて生活に支障をきたすなど重症なら、長期の入院が必要になることもあります。退院後も、ステロイドや免疫抑制薬を飲み続けなければならない人もいます。一定の基準を満たせば、国の指定難病に認定されます。
一方、ほぼ無治療のままでも症状が進行せず、日常生活や仕事を難なく続けられる患者さんもいます。
天疱瘡の診療は、正しい診断と重症度の判定が最も大切です。長期間の治療になるので、信頼できる皮膚科専門医とともに、病気と向き合うことが一番です。