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思春期の子どもを持つあなたに 関谷秀子

医療・健康・介護のコラム

第10部 発達障害(上)母親に「ゲームのアプリのために、クレジットカードをよこせ」と暴れた中3男子。父親が警察を呼んだ後に

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 生まれつき脳の一部に何らかの機能障害があることで発症するが、なぜ機能障害が起こるのかについては、現時点では十分には明らかになっていない。

 発達障害には、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害などが含まれる。本人の得意な部分と不得意な部分を、本人、家族、学校などが理解し、生活の中で工夫していくことが大切だ。

学校では無気力、家庭では暴言と暴力を

 都内の中学3年生のA君に変化が起こったのは中学2年の3学期のことです。遅刻が増え、宿題も提出しないで、テストも白紙。先生に注意されても無視するようになりました。母親がスクールカウンセラーに相談したところ、「A君の気持ちに寄り添うことが大切。言い分を聞いてあげてください。満足すれば治まるはず」と言われました。

 しばらくは、その助言に従っていましたが、まったく効果はなく、むしろ問題行動がエスカレートしていきました。母親に対しては、「~を買ってこい」「そこに座るな」「俺の言うことを聞け」などと暴言を吐き続け、自分の要求が通らないと、蹴ったり、物を投げたりの暴力行為にまで及ぶようになりました。その結果、母親は 肋骨(ろっこつ) を骨折してしまいました。

 とうとう、警察沙汰になってしまったのは、しばらく後のことでした。

 ある日、母親が仕事に出かけようとしたときのことです。

 玄関にまでA君が追いかけてきて、「スマホゲームのアプリを入れるから、クレジットカードを貸せ」と高圧的に迫りました。

 急いでいたこともあり、さすがに母親は強い口調で言いました。

 「いい加減にしなさい!」

 この言葉に、A君はキレました。

 「取り消せ! 謝れ!」と、ポットや炊飯器やパソコンを投げつけてきました。身の危険を感じた母親が、家の外に逃げ出さなければならないほどの荒れようでした。

 その後、父親が帰宅したときにも、A君の興奮はおさまっておらず、家のガラス窓は粉々、ドアは蹴破られた状態でした。床には包丁が散乱していたこともあり、危険を感じた父親は、ついに警察に連絡しました。

 警察官がやってきた時には、A君は落ち着きを取り戻していました。

 暴力行為とはいえ、親子間のトラブルです。警察官はA君を医療機関に連れていくことを両親に勧めました。

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shisyunki-prof200

せきや・ひでこ
精神科医、子どものこころ専門医。法政大学現代福祉学部教授。初台クリニック(東京・渋谷区)医師。前関東中央病院精神科部長。

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