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「続・健康になりたきゃ武道を習え!」 山口博弥

医療・健康・介護のコラム

空手はおまけがたくさん! 筋力や柔軟性がアップし、感情をコントロールする力も

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「組手はコミュニケーション」 怖いけど楽しさも

 相手と突きや蹴りを出し合う「組手」でも、自信は培われてきた。

 尾上 (げん)() 君の回でも書いたが、極真空手の場合、顔への手による攻撃以外は、体に直接当てることが認められている「フルコンタクト(直接打撃制)」ルール。上田さんは最初、「逃げたい」と思った。怖いし、当てられたら痛いのだから。

 でも、続けているうちに、少しずつ突きや蹴りが出せるようになり、相手の攻撃を「受け」でブロックしたり、流したりもできるようになってきた。怖さは消えてはいないけれど、今は「経験を積みたい」という気持ちの方が勝っている。

 「 (まき)(わら) (※)を素手で突く。冬の寒さの中、滝に当たる。いずれも痛みを伴います。そんな時、自分はどう変化するのか。 ()(しゅく) するのか。組手でも、興奮や緊張を伴います。その興奮や緊張を、どう受け止めるのか。客観的に、それらを受け入れることが大切です」(松井館長)

 ※巻藁=まきわら。端に藁を巻いた板を地面に深く差し込み、藁の部分を拳で突く空手の鍛錬用具

 (※山口注:松井館長のこの言葉を聞いた時、「まさにマインドフルネスだ!」と思った。「武道とマインドフルネス」については、3年前のシリーズの この回 をご覧ください)

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審査では組手も行う。オレンジ帯が上田さん。「組手は卓球に似ている。2、3手先まで読んでラリーをするのが理想だが、まずは球をラケットできちんと受けることが大事」(松井館長)

 組手で、先輩たちはもちろん手加減してくれる。中には、組手の中で自分が苦手な技を練習させてくれる人もいれば、 (ちょ)(とつ) 猛進タイプでガンガン攻めてくる人もいる。

 様々なタイプの相手と戦いながら、「どう攻めて来るんだろう?」「ああ、こう来るのか」などと考え、「間合い」を測りつつ、技を真剣に交換する。そのうちに、相手とのやりとりが楽しい、と思えるようになった。「組手はコミュニケーション」と言われるのが、今はよく理解できる。

 「空手の稽古は、常に意識を持ちながら体の中を開発していく作業なんです。そのうち、相手の考えや狙いも分かるようになります。そして、楽しくなる。ぜひ、みなさんも体験してほしい」
「自分自身が自分を操縦する。そのためには、目的意識を持って、必要な体力、柔軟性、技術を正しく身に付けなければなりません。目的意識がなければ、すべてが無になります」(松井館長)

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審査の最後は、みんなで土下座、ではありません。筆記試験で、「道場訓」「極真の精神」などを暗記して書く

 学生時代、勉強は得意だったから、テスト前の一夜漬けで満点が取れた。しかし、空手の昇級審査はそうはいかない。これまで審査は3回受けたが、一夜漬けは通用しないと痛感した。日々の稽古の、一つ一つの動作の積み重ねで自分を作り上げ、審査の本番では、一生懸命努力してきたことしか出せない。「そこが空手の魅力」と感じている。

 こうして完全に極真空手にハマった上田さんは、白帯から昇級してオレンジ帯になった時は、ネイルの色をオレンジに塗り、青帯になった時はブルーにした。キュウリのたたきを作る時は、まな板の上にキュウリを置き、正拳突きで割る。

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正拳突きで作ったキュウリのたたき(上田さん提供)

 だが、そんな上田さんが、予想外の事態に直面することになった。思う存分、空手ができなくなったのである。

 詳しくは次回に。(山口博弥・読売新聞編集委員)

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山口 博弥(やまぐち・ひろや) 読売新聞東京本社編集委員

 1962年福岡市出身。1987年読売新聞社入社、岐阜支局、地方部内信課、社会部、富山支局、医療部、同部次長、盛岡支局長、医療部長を経て、2018年6月から編集委員。同年9月から1年間、解説部長も兼務。医療部では胃がん、小児医療、精神医療、慢性疼痛、医療事故、高齢者の健康法、マインドフルネスなどを取材。趣味は武道と映画観賞。白髪が増えて老眼も進行したが、いまだにブルース・リーを目指している。

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1件 のコメント

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己を見て、相手を見て、周囲を見て、考える

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

おまけが多いのはサッカーでも同じで、サッカーはサッカーだけで成立しませんし、ボールと私だけでもなく、私と相手だけでもありません。 最初から、全て...

おまけが多いのはサッカーでも同じで、サッカーはサッカーだけで成立しませんし、ボールと私だけでもなく、私と相手だけでもありません。
最初から、全ての事を見て考えて実行できるわけ等ありませんが、ボールの止める蹴るがある程度出来たら、むしろ他の要因の方が重要です。
一方で、他の事を突き詰めた先に、さらにその上のレベルのボールの止める蹴るの再認識がありますが、その成長にも個性があります。

サッカーの事ばかり書いているようで、本質はあらゆる競技に共通する部分があります。
しょせんは同じ人間のやることだからです。

実際、自分が振り返りメールや教科書を工夫しても、努力するのは本人たちなので、学生指導でも成功ばかりではありませんし、過去の指導の失敗も糧になっています。

昨季は下位リーグ低迷の前シーズンへの危機感とあいまってハマりましたが、やっぱり自分たちの見たまま感じたままの学生なりのサッカーがやりたいと言い出せば強要も出来ません。(やりたいようにやる、の意味をはき違えれば逆戻りですが。)
味方や相手やその他の状況を見て微妙にやり方を変えるとか、外来診療や手術そのものなので、プロでも通用するコントロールのレベルを目指して主体的に取り組んでくれる医学生さんが増えてほしいです。
サッカーの上達を目指して、ものの理屈や武道なんかとの理屈の繋がりも学んでいくとより多くの患者さんや医療者との会話の引き出しも増えます。
全ての道はローマに通じるというか、武道やスポーツに繋がっていきます。

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