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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

「口内炎が2週間以上治らなかったら疑って」 舌がん闘病中の堀ちえみさんが闘病記

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「ステージ4」から希望のステージへ

「口内炎が2週間以上治らなかったら疑って」 舌がん闘病中の堀ちえみさんが闘病記

 今年2月に舌がんの手術を受けて闘病中のタレント、堀ちえみさん(52)が、著書『Stage For~舌がん「ステージ4」から希望のステージへ』(扶桑社)=写真=を出版した。10月20日に東京都内の書店で開いた記念のサイン会では、舌のリハビリ中のために口頭でのやりとりはなかったものの、メディアからの事前の質問に文書で回答。書籍を出版することになったきっかけについて、「私の経験をお伝えすることで、『口内炎が2週間以上治らなかったら、舌がんを疑った方がいい』ということを広く知っていただきたいという思いもありました」と、語った。

年に4000人以上が発病

 国立がん研究センターの資料によると、日本で1年間に舌がんと診断される患者数は約4400人(2015年)で、男性が約6割とやや多い。自覚症状としては、舌のしこりやただれのほか、舌の動きに対する違和感やしびれ、粘膜に赤い斑点(紅板症)や白い斑点(白板症)ができている、口内炎が治りにくい……などがみられることもある。

 がんが早期であれば、舌の切除範囲をなるべく小さくしたり、舌を温存して放射線で治療したりする方法もある。がんが進行していると、舌を広範囲に切除しなければならなくなる。

舌の6割以上を切除 太ももの組織を移植して再建

 堀さんの舌がんは最も進行したステージ4。手術で舌の6割以上を切除し、転移のある 頸部(けいぶ) のリンパ節を切除した。切除した舌の部分には、太ももの組織を移植して舌を再建する手術を行った。

 堀さんは著書で、当初は口内炎と診断されて歯科のレーザー治療などを繰り返したこと、持病のリウマチの治療薬の副作用ではないかと疑われたこともあったことなどを説明。最初に舌に違和感を覚えてから診断がつくまで半年以上かかり、がんが進行してステージ4にまで至ってしまった後悔の気持ちをつづっている。

話すことができない分、気持ちを文字に

著書の出版を記念したサイン会で取材に応じた堀ちえみさん(10月20日、東京都渋谷区の青山ブックセンター本店で)

著書の出版を記念したサイン会で取材に応じた堀ちえみさん(10月20日、東京都渋谷区の青山ブックセンター本店で)

 20日のサイン会での取材は、舌のリハビリ中のため、口頭での質疑応答はなく、堀さんの自筆の手紙や、事前にメディア側から提出した質問についての回答が文書で配られた。

 書籍を出版することになったきっかけについて、堀さんは、支え続けてくれた家族やファン、がんなどの病気と闘っている人々への感謝の気持ちを表すのに「話すことができない分、その気持ちを文字としてつづりました」と説明。さらに、診断がつくのが遅れてしまった自身の経験から、「『口内炎が2週間以上治らなかったら、舌がんを疑った方がいい』ということを広く知っていただきたい」と訴えた。

 もちろん、長引く口内炎だからといって必ずしも舌がん(口腔こうくうがん)だというわけではないが、がん以外の別の病気が隠れている可能性もある。症状が長引くようであれば、口内炎だからと侮らずに受診したい。

「らりるれろ」や「なにぬねの」などが難しく

 たとえ手術でがんは取り切れたとしても、舌を切除すると、のみ込んだり言葉を話したりすることの術後の生活への影響は大きい。太ももの組織を移植して再建した舌は、元の舌のように動かせるわけではないためだ。

 堀さんは言葉の練習のため、2週間に1度、言語聴覚士による発声・発語のトレーニングを受けているほか、ボイストレーニングも月1回、先生のもとへ通って練習している。「らりるれろ」や「なにぬねの」など、舌を使って発声する言葉が難しく、「さしすせそ」や「ざじずぜぞ」「つ」など、舌を上あごにつけて風を作る音が、特に難しいという。

 残った舌に移植した太ももの組織の状態は日々変化するため、それにあわせた発語を調整する苦労も絶えないという。それでも、「一進一退ですが、昔の自分と比べても意味がないと開き直って、前向きに頑張っています」と述べている。

「奇跡を起こしたい」

著書のサイン会でファンと握手する堀ちえみさん

著書のサイン会でファンと握手する堀ちえみさん

 著書の最後の章には、「奇跡を起こしたい」というくだりがある。今は話すことさえ不自由だが、歌手として再び、ファンの前で歌うという「奇跡」だという。サイン会には、同世代とみられる女性をはじめ、復活を願うファンが列をつくった。

 今後、リハビリを経てやってみたいこと、仕事についての問いに「やはり歌いたいです。歌が歌えるようになったら、デビュー40周年記念のライブをやりたい」と堀さん。「ですから、今はリハビリに励んで、絶対に実現させる!という夢に向かって頑張っています」と決意を表した。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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症状もシステムの問題も放置するのが人間

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

口内炎を2週間ほおっておくとか、市販のビタミン剤だけで様子を見る人は案外多いのではないでしょうか? 多くの人のたいていの病気や症状は、そもそも、...

口内炎を2週間ほおっておくとか、市販のビタミン剤だけで様子を見る人は案外多いのではないでしょうか?
多くの人のたいていの病気や症状は、そもそも、過労や睡眠不足の産物なので、ご飯と水分とって寝るのが一番です。
一方で、症状が改善しなかったり、直近では改善しても進行してくる場合は、医師の診察が必要になってきます。

大病院信仰が過度に進まないためには、市中の医師、かかりつけ医、専門医、そして、市民が医療リテラシーを持つことです。
多くの人の理解や感情の問題はすぐに進むものではありませんが、ほおっておいて解決されるものでもありません。

カンファレンスでも専門医の先生の見落としや知識の抜け穴を突いたようなケースをたまに見かけます。
縦割り行政や機械の進歩の影響は本当に著しいものです。
しかし、科学や人間および人間社会のシステムの限界を責めることはあまりに意味がありません。
舌癌とかわずかな病変の問題は難しいと思います。
一方で、小さな症状を放置してしまうことは誰にもあるのではないでしょうか?

がん医療やトンデモ医療などでSNSが騒がしいですが、標準医療の至らぬ部分もありますし、高度検査には人材や財源の問題もありますが、こういうマイナーな疾病の取り扱いも含めて、システムが組まれていくといいと思います。
早期発見が必ずしも良い結果に繋がるとも限りませんが、多くの人は最悪にはならないとは思います。

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