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一病息災

闘病記

[ピアニスト 西川悟平さん]ジストニア(3)独特の練習法 手応え

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[ピアニスト 西川悟平さん]ジストニア(3)独特の練習法 手応え

 2003年、ニューヨーク近郊の幼稚園。辛うじて動く指を使って「きらきら星」を弾くと、子どもたちは目を輝かせ、曲に合わせて楽しそうに歌い出した。それを見て、強く胸を打たれた。「ちゃんとした指遣いの演奏でなくてもいいんだ! 今、自分にできる音楽をやってみよう」。新しい練習法に挑戦した。

 それは1音ごとに約6秒間、曲がった指を伸ばして 鍵盤けんばん を押さえ続け、手の筋肉に指の位置をたたき込むという方法だ。ゆっくりと進めるため、1小節を弾くのに20分かかることもある。時に練習は明け方にまで及んだ。

 「意識がもうろうとするような過酷な状態の中で、体に1音1音ゆっくり染み込ませたので、ちゃんと寝た後に同じ箇所を演奏すると、安定してスッと弾けたんです。その感覚を覚えたら、『これはできる!』って確信しました」

 これは師匠である著名ピアニストのデイビッド・ブラッドショー氏の指導による練習法だった。「『このやり方で本当に弾けるようになりますか?』と聞いたら、先生は『やりなさい。良いものには時間がかかるんだよ』と、いつもおっしゃっていました。もし従っていなかったら、僕は今でもピアノが弾けていないと思います」

 地道に練習を重ね、7年後には5本の指を使ってプーランクの「即興曲第15番」を演奏できるまでになった。

ピアニスト 西川悟平さん(44)

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