産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
母と娘の強い結びつきが結婚の障害に、どうする?
大手販売会社に勤務している美幸さん(仮称、29歳)は、社内にある「健康相談室」を訪れました。悩みの相談です。後輩との人間関係の相談は思わぬ方向に進んでいきます。
後輩はイキイキ、浮いている私
私 : 産業医の夏目です。よろしく。
美幸: ストレスなんです。
私 : 職場かな?
美幸: そうです。
私 : 人間関係かな?
美幸: 後輩とです。私は入社8年目。後輩と仕事をして、指導もします。
私 : それで。
美幸: 一生懸命、指導しているのに、熱心さが足りないというのか。
私 : そうなの?
美幸: 仕事6割、彼氏、ファッション4割かな。エリート男子、イケメンがいると、すぐ 媚 びる目つきですね。
私 : そうなんだ。
美幸: ランチをしても、男とフアッション、化粧品の話ばかり。 後輩はイキイキしているから、私の方が浮いているのかもしれませんが……。
私 : どうしてかな?
美幸: お母さんの言うとおりにやってきました。でも、その指導が良かったかどうか、少し悩み始めているんです。付き合っている人もいますが、うまくいっていなくて……。
母の教え通りキャリア志向に
美幸: 女性も経済力が重要という母の教え通りに頑張って、有名企業の総合職に就職できました。
私 : 順調に来たんだね。
美幸: 母は専業主婦で、父に逆らえなかったから、私にキャリアウーマンを期待したんですよ。後輩を見ていると、母の言う通りでよかったかどうか、疑問に思うことがあります。
私 : 疑問が?
美幸: そうです。
私 : 疑問があるなら、自分を振り返ってみるのもいいですよ。
美幸: そうですね。
美幸さんの話から親子の会話を再現します。
「誰のおかげで、生活できるんだ」、父の言葉で母は悟った
母親: 会社、どうだった?
美幸: バリバリ働いたと言えば、喜ぶのね、母さんは。
母親: そうよ。女性は経済力がないとダメよ。
美幸: わかるけど。
母親: 母さんは専業主婦だったから、お父さんには逆らえなかった。「誰のおかげで、生活ができるんだ」と侮辱を受けて、離婚したいと思ったこともあるの。
美幸: しんどかったね。
資格やキャリアがないから、離婚は無理
母親: でもね、離婚を真剣に考えてみたけど、生活の 目途 が立たなかったのよ。それからは我慢、我慢。忍耐よ。
美幸: だから母さんの言うとおりに有名中高、大学に入学した。
母親: 頑張ったわね。
美幸: 就活も戦い抜いたわよ。
母親: 男に頼らなくても生きていけるし。
美幸: でも……母さん、最近、むなしいの。
母親: むなしい? それってぜいたくよ。
「あなたは、最高の完成品」
美幸: 後輩のイキイキした姿を見ていると、これでいいのかと思うのよね。
母親: わからない。あなたは自慢の娘よ。
美幸: 自慢の娘か……。
母親: 最高の完成品よ。
(怒りが湧いてきて)
美幸: えっ、完成品。私、人間よ。何、言ってるの。
彼氏の件で悩んでいると言うので、母親との関係を含めてカウンセリングをしました。
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