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森本昌宏「痛みの医学事典」

コラム

顔を洗って腰を伸ばした瞬間に…「ぎっくり腰」 腰椎椎間関節症なら一度の薬液注入で完治も

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 「顔を洗って腰を伸ばした瞬間に激痛が走り、3日間は起き上がることもできなかった。その後も腰を伸ばすと痛くて、車の運転もつらい」として、私の外来を訪れる患者さんがおられる。このような急に起こった腰痛は「ぎっくり腰」と呼ばれている。

 ぎっくり腰は正式の医学用語ではないが、「医学大辞典」(医学書院)には、「腰仙部挫傷」であり、「急激に発症する強い腰痛の総称」との説明がある。なお、国語辞典には「重い物を持ち上げようとした時などに起こる激しい腰痛」とあるが、そうした時にだけ起こるわけではない。ドイツ語ではへクセンシュス=「魔女の一撃」と呼ぶ。魔女でなくても女性の一撃は確かに怖い……。

 なお、患者さんのなかには「びっくり腰」と表現される方がおられるが、言い得て妙である。このぎっくり腰の原因としては、「腰椎椎間板ヘルニア」「腰椎椎間関節の障害」「 骨粗鬆症(こつそしょうしょう) に伴う腰椎圧迫骨折」などが多い。

椎間板ヘルニアとの違いは

 今回のテ-マは「腰椎椎間関節症」である。患者さんのなかには、ぎっくり腰はすべて椎間板ヘルニアによると思っている方が多いようだが、決してそうではない。

 背骨は前方の椎体(椎間板を挟んでいる)、後方にある左右一対の上下関節突起間関節(これが椎間関節、いわゆる「ちょうつがい」である)の三つの関節によってつながりを形作っているが、この上下関節突起間の関節が変性したり、捻挫を起こしたりして激痛が生じるのが、椎間関節症である。関節は滑膜と呼ばれる膜で覆われているが、この膜には神経が豊富に枝を出していることから、障害によって強い痛みを引き起こすのだ。

 朝、起きる時に腰がこわばって、動き始めると腰の左右どちらかに痛みが起こり、横になると楽になるといった場合には、腰椎椎間関節症を疑うべきである。さらには、痛みが存在する部位の (きょく) 突起(背中に連なっている骨のでっぱり)の脇を押してみて、痛みが強くなるならばなおさらである。なお、椎間関節症で、関節の機能が低下していたり、椎間板が傷んでいる場合には、慢性化することがあるので、決して放ったらかしておいてはいけない。

 区別しておくべき疾患は、腰椎椎間板ヘルニアである。このヘルニアでは、下肢(脚)へ走るような痛みやシビレを伴うほか、神経学的検査により、腰椎椎間関節症ではみられない異常が見つかる。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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