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精子に隠された「不都合な真実」

コラム

精子は「細胞崩壊」しても排除されず、精液の中に…「ヒト精子性悪説」

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素人でもわかる様々な形態異常の存在

 これまで様々な精子の写真をお見せしてきましたが、造精機能障害がひどくなると、頭部が ()(えん) 形の良好な精子は姿を消し、素人でもすぐにわかるほど、精子の形が崩れてきます。これは、体の中で精子にだけ見られる現象であり、私たちは、これを「細胞崩壊」と呼んでいます。

 写真は、様々な精子の異常形態をまとめたものです。状態の悪い精子と毎日にらめっこしている私たちは、研究が進めば進むほど「ヒト精子性悪説」に傾いていきました。その理由を説明しましょう。

個々の精子の異常をまとめた図

個々の精子の異常をまとめた図

 悪い細胞というと、みなさんはまず、がん細胞が頭に浮かぶと思います。正常な細胞ががん化する背景には遺伝子の異常があります。これは精子の場合とよく似ています。それでは、精子とがん細胞を比べてみましょう。

 「ヒトの体では1日に10万個のがん細胞が発生するが、免疫細胞がこれを食べて守ってくれる。そして、それをすり抜けたがん細胞が長い時間をかけて育ち、がんになる」といった話を聞いたことがあると思います。実は、ひどく変化した細胞は免疫細胞に見つかってしまいます。いくら、がん細胞といえども、素人がぱっと見てわかるほど形が変化するわけではありません。

精子を免疫細胞から守る仕組み

 一方、精子は思春期以降に生産が始まるので、自分自身の細胞であるにもかかわらず、もともと免疫細胞に狙われやすいという弱点があります。このため、精巣(精子)を免疫細胞から隔離するための様々な仕組みが存在しており、「免疫特権」と呼ばれています。この仕組みがあるため、造られた精子がどんなに細胞崩壊しても、免疫細胞のチェックをすり抜けて精液の中に出てきてしまうのです。

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seishi-shinjitu

精子に隠された「不都合な真実」

兼子 智(かねこ・さとる)
東京理科大大学院、慶應大大学院修了。薬学博士、医学博士。東京歯科大市川総合病院産婦人科非常勤講師


黒田 優佳子(くろだ・ゆかこ)
慶應大医学部卒、同大学院修了。医学博士。「黒田インターナショナル メディカル リプロダクション」院長


萩生田 純(はぎゅうだ・じゅん)
慶應大医学部卒。博士(医学)。東京歯科大市川総合病院泌尿器科講師


中川 健(なかがわ・けん)
慶應大医学部卒。医学博士。東京歯科大教授,同大市川総合病院副院長、泌尿器科部長、副リプロダクションセンター長


高松 潔(たかまつ・きよし)
慶應大医学部卒。医学博士。東京歯科大教授,同大市川総合病院産婦人科部長、リプロダクションセンター長

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