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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

インフルエンザ 今季は早くも流行の兆し ワクチンや手洗いの徹底で感染予防を

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9月半ばに流行の目安超え

インフルエンザ 今季は早い流行入り ワクチンや手洗いの徹底で感染予防を

 インフルエンザが例年にない早い流行の兆しを見せている。全国の定点当たりの患者報告数が、通常よりも2か月以上早く第37週(9月9日~15日)、第38週(9月16日~22日)と連続して流行入りの目安となる1を超えた。翌週は0.92と下がったものの、第40週(9月30日~10月6日)には再び増加に転じている。インフルエンザに詳しい、けいゆう病院(横浜市)感染制御センター長の菅谷憲夫さんに予防や治療のポイントなどについて話を聞いた。

 厚生労働省の10月11日の発表によると、第40週(9月30日~10月6日)のインフルエンザの発生状況は、全国で流行入りの目安をわずかに下回る0.99。28都道府県で前週より増え、1県で変わらず、 18府県で減少した。都道府県別では、沖縄県(26.83)が特に多く、以下、鹿児島県、福岡県、佐賀県、石川県、宮崎県、三重県、新潟県、東京都で1を超えた。

 流行が早い立ち上がりをみせたことについて、菅谷さんは「インフルエンザウイルスそのものの抗原性に大きな変異はみられず、理由は分からないというのが本当のところです」と話す。

 昨シーズンは、2009年に大流行した「新型」が季節性インフルエンザとなったA型のH1N1タイプが7割、いわゆる香港型と呼ばれるH3N2が3割で、B型はほとんど流行しなかった。今季は「まだきちんとした報告書はないが、うちの病院の患者さんなどは昨年同様にH1N1が多いようだ」という。

ワクチンには50%程度の発症予防効果

 インフルエンザの予防には、まずワクチンの予防接種や日頃の手洗いを徹底することなどが重要だ。ただし、ワクチンを接種しても発症を完全に防げるわけではない。

 菅谷さんによると、ワクチンの効果はテストネガティブ法という迅速な調査方法が普及したことで、他の先進国ではシーズン中の1月頃にはその年の有効率が分かるようになった。

 ワクチンの効果はインフルエンザのタイプによって異なり、「A型のH1N1が流行すれば50%くらい、B型にも50%くらいの発症予防効果がある」と菅谷さん。一方、A香港型(H3N2)が流行すると効果は30%くらいに低下するという。高齢者ではさらに効果が落ちるため「H3N2がはやると、特に高齢者はワクチンを打ったから安心というわけにはいかないので、気をつける必要がある」としている。

 ワクチンは発症予防に加えて、重症化を抑えて入院を減らす効果が認められている。また、小児については、「6~12か月未満の乳児への効果は低めだが、1歳~6歳くらいには効果が高い。もともと免疫をもっていないのが理由と考えられ、1、2歳児こそ接種すべきだ」と菅谷さんは話す。

手洗いやマスクで手指についたウイルスの侵入を防止

 インフルエンザウイルスは、くしゃみなどによるしぶき(飛沫ひまつ)によってウイルスが広がる飛沫感染や手指などを通じた接触感染でうつる。よく手洗いをして清潔に保つことで、ウイルスの付着したものに触れた手指で口を触ることなどで感染するのを防ぐ。また、一般的なマスクはウイルスの通過そのものを防ぐことはできないが、マスクを付けていることでウイルスが付着した手指で直接、鼻や口に触れることを防ぐ効果が期待できる。

 一方、うがいは、感染を防ぐ効果は科学的に証明されていないとされている。

抗インフルエンザウイルス薬をどう使う

 インフルエンザの治療は、2000年代の抗インフルエンザウイルス薬の普及によって大きく変わった。「タミフル」に代表される「ノイラミニダーゼ阻害薬」には、内服薬、吸入薬、点滴薬があり、治療の幅が広がった。

 タミフルには発熱などの症状を抑えて、罹病りびょう期間を短くする効果が認められている。一時、異常行動との関連が疑われて子どもへの処方が制限されていたが、現在は10代の子どもにも使うことができる。2018年には値段の安いジェネリックも発売された。

 インフルエンザは基本的に自然に治癒する病気であるとして、世界的にみてもタミフルの多くが日本で使われてきたことへの批判もある。

 菅谷さんは「高熱などで苦しんでいる患者さんの症状をとってあげることは大切なこと。ワクチン接種が減りタミフルもまだなかった1990年代後半、患者さんが病院に殺到して人工呼吸器も足りないほどだった時代を経験していると、家で寝ていればいい病気とはとても言えない。早期診断、早期治療が重要です」と強調する。

耐性ウイルスや副作用への注意

 また昨年には、新しいタイプの抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」が登場した。従来薬とは作用の仕方が異なる「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」という薬で、タミフルが5日間服用するのに対し、ゾフルーザは1回の服用で済むこともあり、昨季は多くの患者に使われたとされる。

 しかし、ゾフルーザにはウイルスのアミノ酸変異を引き起こしやすい問題点が指摘されているほか、今年3月には、25例の出血関連症例(うち因果関係が否定できない症例13例)が発生して3例が死亡(同0例)したとの報告があり、添付文書の重大な副作用として「出血」が加えられた。

 ゾフルーザを販売する塩野義製薬は9月、海外の学会で発表した内容として、変異は低年齢小児患者で高く、ウイルスの型としては、成人・青少年・小児ともH3N2で高かったことなどを公表。流行するウイルスはシーズンによって異なり、耐性ウイルスの頻度もシーズンによって異なることが知られていることから、引き続き更なるデータ取得が必要であり、適切な情報開示に取り組むなどとしている。

 菅谷さんは、「ゾフルーザは効果の面ではタミフルと変わらないが、ウイルスの変異を起こしやすく、特にA香港型(H3N2)では小児の約25%、成人の約10%で耐性(低感受性)ウイルスが出現するうえ、出血の副作用などの問題もあり、私としては外来診療レベルでは基本的に使う薬ではないと考えている」と話している。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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