精子に隠された「不都合な真実」
医療・健康・介護のコラム
精子検査だけで治療断念!? 「精子が先」の新たな不妊治療モデルは受け入れ可能か
「精子が先」モデルに「心の問題」危惧する声
不妊学級などで精子の質の重要性や不妊治療の限界を説明すると、ほとんどの夫婦は冷静に聞いてくれます。そして、一般論として意見を求められると、みなさんが「すべてのことを知っておきたい」と答えます。
前回のコラムで話した、精子の精密検査の最大の問題点は、悪い結果が出て、それが治療困難であった時、逃げ場がないことです。本人のみならず、奥様への打撃も計り知れないものがあります。
不妊カウンセラーからは「長い期間、様々な治療を尽くしたからこそ、患者夫婦はあきらめることができるのであり、泌尿器科で夫の精子を診察、検査したのみで『治療終了』となるケースが出てくる治療モデルは、現場では受け入れられない」という反対意見もあるのです。また、あるクリニックの院長は「男性不妊が専門の泌尿器科医は全国で40名しかおらず、絵に描いた餅」と、このモデルを批判しました。
精子に詳しい婦人科医、胚培養士の育成を
精子を取り扱う技術の遅れが生殖補助医療の足を引っ張っている現状は、私たちにも責任の一端があります。長い間に蓄積した技術を広く開放し、精子に詳しい婦人科医、胚培養士の育成を急ぎたいと思います。一方、夫婦の心を考えると、生殖補助医療が決して万能ではないという厳しい現実を、どのようにお話しするか、私たちは悩んでいます。(東京歯科大学市川総合病院・精子研究チーム)
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