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僕、認知症です~丹野智文45歳のノート

医療・健康・介護のコラム

認知症でも「ビールが飲みたい!」 猛暑につぶやいたら、「お酒飲んでいいの?」

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周囲はアルコールはダメだと思ってた

 私が認知症になり、自動車販売の営業から事務の部署に移って、まだ間がない頃のことです。真夏のとても暑い日に、職場でふと「あ~、冷たいビールが飲みたいなぁ」とつぶやいたら、近くにいた女性社員が「丹野さん、お酒飲んでいいの?」と驚いたように言うのです。「うん、大丈夫だよ」と答えると「じゃあ、さっそく今晩、みんなで飲みに行こう」ということになりました。

 同僚たちは、認知症は病気だからアルコールはダメなんだと思っていたらしいのです。私の方は、誰も「飲みに行こう」と言ってくれないので、「ここの職場は女性も多いし、みんなあまりお酒が好きじゃないのかな。ちょっと寂しいな」なんて思っていたのですが、どうりで誘われないはずです。「こんなささいなことでも、自分で言わなければ、周りには分からないんだ」と、目からウロコが落ちる思いでした。

病名だけ言うと人が離れる

 認知症の人が、「病気のことを知ると、みんな離れていった」と嘆くのをよく聞きます。でも実際には、「お酒の席に誘っていいのかな」とか、「いろいろ大変だろうから、そっとしておこう」なんて、遠慮しているだけという場合が多いんじゃないかと思うのです。

 だったら自分から「飲みに行きたい」と言えばいいんです。「みんなで集まる時は、俺にも声をかけてよ。もし道に迷って待ち合わせに遅れたらごめんね」なんて話しておけば、お互いに気が楽です。

 病気を隠して生きようと思ったら、家の中に閉じこもるしかありません。かといって、病名だけを言うと、周りはどう接していいかわからないので離れていきます。「病気をオープンにする」というのは、自分にできること、できないこと、やりたいことの三つを話すことだと私は考えています。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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