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僕、認知症です~丹野智文45歳のノート

医療・健康・介護のコラム

認知症でも「ビールが飲みたい!」 猛暑につぶやいたら、「お酒飲んでいいの?」

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成功体験で世界が広がる

 私は、「若年性アルツハイマー本人です ご協力お願いいたします」と書いたカードを携帯して、迷ったらそれを見せて道を尋ねるようにしています。いい大人が自分の家や勤務先への行き方を教えてもらおうとすると、けげんな顔をされることも多く、相手が若い女性だとナンパと間違えられたりもします。しかし、このカードを使うようになってからは、誰もが(もちろん、若い女性も!)親切に道を教えてくれるようになりました。

 コレ、私にとってはちょっとした「成功体験」でした。「このカード、すごくいいよ!」と、認知症の仲間にも強力にオススメしているのですが、「見ず知らずの人にそれを見せるの? 自分は、そこまでオープンにはできないなあ……」という反応で、なかなか広がっていきません。

 やってみれば、成功体験になるのに。新しいことに次々と挑戦したくなって、世界が広がるのに。もちろん、やるもやらないもその人の自由なのですが、私はつい「もったいないな~」と言いたくなってしまうのです。

認知症の人も変わらなきゃ

 認知症になっても安心して暮らせる社会について考えるとき、周囲の理解や支援をどう広げていくか、という話になります。それももちろん大切なのですが、もっと重要なのは、認知症の人自身がどう生きるか、ということなんじゃないでしょうか。

 仕事を続けたいと思うなら、「物忘れなどの症状があってもできる業務を担当させてもらう」「症状を周りに説明して、必要なサポートを受けられるようにする」「ミスを防ぐ仕事の進め方を考える」など、本人にもできることがたくさんあります。こちらの働きかけになかなか応じてくれない職場も中にはあるかもしれませんが、きちんと説明してお願いすれば、「じゃあ、やってみようか」となる場合も、けっこうあるのではないかと思うのです。

 認知症になっても、やりたいことをやればいい。そのためには、歯を食いしばるような努力はいりませんが、工夫は必要です。最初の一歩はちょっと勇気がいるかもしれないけど、思い切って踏み出せば、うれしいことやわくわくすることがたくさんあって、二歩目、三歩目は楽に進めるようになります。

 本人が変われば、周りも変わり、社会が変わる。これまで何百人もの認知症の人に出会って、そう実感しています。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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