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停電でスタッフが熱中症、発電機と扇風機10台で病室に風…千葉台風被害から1か月 クリニック奮闘記

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 9月9日午前に首都圏を通過し、甚大な被害をもたらした台風15号。直撃を受けた千葉県では、3万5000棟以上の住宅が損壊、広範囲で停電が起きました。復旧の遅れが生活を圧迫する中で、地域の医療機関は、住民をどう支えたのでしょうか。最も被害が大きかったとみられる同県南部の「花の谷クリニック」の伊藤真美院長に、この1か月の様子をつづってもらいました。

 花の谷クリニック 1995年、千葉県南房総市で開設。内科、心療内科、がん相談外来。14床の緩和ケア病棟があり、訪問診療も行う。デイケア・デイホスピス施設、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)などを併設し、医療・介護の両面から住民の暮らしをサポートしている。

強風で「いつ窓が割れるか」

強風で「窓が割れる」

敷地のあちこちに転がる倒木

 9月8日 記録的に強い台風15号が近づくとのことで、昼間のうちにクリニックのウッドデッキにあったイスやテーブルなどを中に入れ、夕方には病室の雨戸を閉めた。夜は外来棟2階の自室で横になったが、日付が変わる少し前から風がだんだん激しくなり、建物全体が揺れて、とても眠れない。

 9月9日(停電1日目)未明 深夜から、数分程度の停電を5、6回繰り返している。その度に看護師が病室を回り、患者さん一人ひとりの状態を確認。在宅酸素の機械から電気がいらない酸素ボンベに切り替えた。たんの吸引器は、充電式のものが1台あるが、頻繁に吸引が必要な患者さんがいなくてよかった。

 何かあればすぐ動けるよう、外来棟1階の診察室のベッドで仮眠。午前3~4時頃に風がピークとなり、病棟のホールと東側の角部屋の窓ガラスが激しく揺れて、いつ割れるかと気が気でない。夜勤スタッフが、角部屋の窓の前に机と椅子を置いて見守る。

やっててよかった! 毎月の発電機点検

 9月9日(停電1日目)朝 午前4時過ぎにまた停電してからは、復旧しなかった。1時間ほど待って、発電機を回した。毎月9日を点検日と決めて動かしていたおかげで、あまり慣れていない私でも、始動グリップを引っ張って一度で稼働できた。毎月、ガソリンを新しくして、発電機を動かしてくれていたスタッフに感謝!

 隣の鴨川市から来る 厨房(ちゅうぼう) スタッフは、倒木による通行止めで出勤できず。取り急ぎ、近くに住むスタッフに代わりに来てもらい、発電機を回しながら朝食を用意した。

 外に出ると、日が差して空は明るく、何だかとても静かだったが、デイセンター庄左ヱ門側の大きな木や、中庭のザクロ、ゲッケイジュなどが根こそぎ倒れている。ガラスの破片が飛び散っているのを見つけ、どこかの窓が割れたのかと焦ったが、屋根の太陽光発電のパネルが剥がれて割れたのだった。外はこんなだったのに、病棟、外来棟ともに室内は無事だったことに胸をなで下ろす。

お年寄りは、倒木・停電なんのその

裏側の屋根から飛んできたソーラーパネルのガラス

 9月9日(停電1日目)昼間 2名のスタッフが、飛んできた瓦などで車のガラスが割れたそうで、ブルーシートで窓をふさいだ車で出勤。

 館山、南房総、鴨川……南房総の広範囲で停電している様子。車のテレビをつけたが、どの局もニュースをやっていないので、被害の範囲や程度など、全貌がわからない。発電機のガソリンも残り少ないが、周辺のガソリンスタンドはどこも開いていない。10リットルの備蓄は、ちょっと少なかったようだ。

 こんな時でも、シルバーカーを押して、ご近所の患者さんがやってくる。家にまだ薬があるという人には、「今日は電子カルテが見られないから、後でまた来てね」と話して帰っていただく。

 「本日のデイケアはどうしますか」とリハビリチームに聞かれ、「こんな時だからこそ、迎えに行って安否確認し、希望者は連れてきて」と答える。結局、ほぼ全員デイケアにやってきて、いつもと変わらぬ光景になった。

 午後は、普段通り訪問診療へ。自宅の患者さんは、「風がすごかったね」などと言っていたが、落ち着いた様子だった。

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