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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと

コラム

医者だって、医者選びは難しい

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医者だって、医者選びは難しい

 医師とは言っても、23年前に定年になってから診療には従事していないのですが、色々と医療面で知人からご相談を受けることは続いています。「医者を紹介してほしい」という依頼や、「手術と言われたけど、どんなものか」という、言わばセカンドオピニオン的な相談が多いのです。これがなかなか難しい。

 美容医療分野なら昔とった杵柄で、医師の紹介でも、治療の是非についてのセカンドオピニオンでも多少はお役に立つことができますが、他の分野となると、日進月歩の医学の世界で、すぐにはお役に立てないことが多いのです。ことに医者選びとなると、家族や自分自身の場合でも途方にくれることがしばしばあります。なぜ医者選びが難しいか、考えてみましょう。

かかり付けがいない

  今の日本の医療制度の問題点は、専門分化しすぎていることです。心臓と腎臓にそれぞれ専門家が必要なことはわかりますが、整形外科でも手の外科、足の外科と専門分野を持つ医師もいます。細分化していますね。かつて、わが国ではかかりつけ医を持つのが普通の時代がありました。

 大方が内科医ですが、そのほか小児科医も兼ね、産科、外科などを除くほとんどの診療科を兼務し、患者の全て、その家族も含め健康状態を把握して、相談に乗ってくれました。

 今は亡き僕の 親父(おやじ) も、そのかかりつけ医的な役を果たしていました。

 そして、自分の専門以外の問題には、適切な専門医に紹介をしていたものです。今はそのような開業医が激減し、また患者も、風邪を引いただけでも大学病院を訪れるようになり、医療の非効率化が問題となっています。ここにきて、やっと医師側も問題点に気づき、かかりつけ医に代わる総合診療医という診療科を育てようとしています。

専門医という資格も混乱している

  今、わが国には 標榜(ひょうぼう) 診療科制度というものがあり、法律で医師が広告できる診療科名が定められています。それが標榜診療科名です。この中には内科、外科、産婦人科など多数の診療科が含まれます。これはあくまで広告に掲載可能な診療科名であり、医師免許を持っていれば、どの標榜診療科を名乗っても構いません。これを自由標榜制と言います。例えば、僕が明日から、経験のない産婦人科医院を開業しても医師法違反にはなりません。また、これとは別に、各学会が定めた専門医制度というものが存在しますが、ある診療科を名乗っている医師がその科の専門医であるとは限らないのです。これでは一般の方はなかなか専門医にたどり着けません。

 そこで数年前から厚労省主導で専門医制度協議会が発足し、まずレベルもまちまちな専門医制度を横並びにし、標榜科名の使用も専門医に限るように医師法改正が検討されていますが、まだ数年はかかるでしょう。

手術の腕前を知るのは難しい

  最も難しいのが外科医の腕前です。手術の上手下手は医師によっても判断が異なる面があるし、メス裁きは見てみないとわからないからです。今は麻酔が進歩したので、昔ほど手術時間を短くすることにこだわらなくても良くなりました。それでも手術は迅速に、できるだけ体を傷つけないで、効果を挙げることが望ましい。昔は、大きく切って患部がよく見えるようにして手術をするのが鉄則でしたが、近年は内視鏡やダビンチという手術支援ロボットを使った手術などの導入で、切開範囲をより小さくして体への負担を減らすのが優れた手術とされ、手術のパラダイムが180度転換してきました。

かかりつけの医師を持つこと

  どうやって医師を選べばいいか。まず、かかりつけの医師を持つことでしょう。近くの内科の開業の先生と親しくしておくことをお勧めします。特に具合が悪いところがなくとも、普段から健康診断を兼ねて話し相手になってもらうことです。また、それもない場合、どこにいってよいかがわからないときは、最近は大病院でも、総合内科といった名称で、どこが悪いかよくわからないような患者さんに対応するようになりましたので、ご利用してはいかがでしょうか。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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shioya_prof

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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1件 のコメント

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ネットと画像診断の進歩が医療を動かした

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

十数年前に新研修医制度になって良かったことが、外科医の腕や性格の多様性に触れる研修医が増えたことです。 勿論、それも万能ではありませんが、誰が見...

十数年前に新研修医制度になって良かったことが、外科医の腕や性格の多様性に触れる研修医が増えたことです。
勿論、それも万能ではありませんが、誰が見ても上手な外科医と下手な外科医は明らかです。
また、手術数は万能ではないですが、ある程度の担保にはなります。
電子カルテで何十件も致命的なミスを揉消したり虚偽記載するのは難しいので、抑止力になります。

さて、僕は現代患者の要求の高さに対して、安易なかかりつけ医制度の推進には懐疑的な立場です。
逆に、かかりつけ医の手に余るものまで、無理に神格化させたかかりつけ医に振るから、かえって、うまくいきません。
放射線科医も縦割り行政で、画像診断医の腕は専門医でも一定の水準の担保にしかならないですが、それでも、CTやMRIなどの存在は診断精度を大きく高めますので、大病院信奉にかえって進むわけです。
むしろ、長所を繋ぎ、欠点を補うシステムに、病院間の連携や地域間の連携が進むべきでしょう。

高齢化による高血圧患者の増加に伴う脳卒中や心大血管イベントのチェックを鑑み、かかりつけ医が日々の血圧をチェックし、個体差や標準医療の弱点を補う定期的な全身の画像診断がすすめばいいと思います。
救急車に乗ってからでは救命率も低いし、救命崩壊がますます進みます。
ということは、軽い診断治療でうまくいかない場合は、さっさとCTやMRIや非画像の精密検査のお世話になるべきです。

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