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【1】ギャンブルの沼 2 「ギャンブル依存」は病気だったの!?

シリーズ「依存症ニッポン」

「ギャンブル依存」は病気だったの!?(下)カジノ設置は既定路線。社会全体で出来ること、出来ないこと

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「ギャンブル依存」は病気だったの!?(下)カジノ設置は既定路線。社会全体で出来ること、出来ないこと

医療機関と自助団体の連携プレーが

 ギャンブル依存に対する医療機関の役割とは何か。

 効果的な薬剤はなく、限られた医師の診察時間で、患者の心身を変えていくには限界がある。アルコールや薬物などのように、患者を強制的に入院させて、体内の依存物質を抜くこともできない。ギャンブル依存の難しいところだ。

「ギャンブル依存」は病気だったの!?(下)カジノ設置は既定路線。社会全体で出来ること、出来ないこと

常岡俊昭医師は、医療機関と自助団体の新たな連携を模索している

 昭和大烏山病院(東京都世田谷区)精神科講師の常岡俊昭医師は、2019年、新たな取り組みをスタートさせた。主にアルコール依存症の自助団体などが使っている「SBIRTS(エスバーツ)」の方法論を、ギャンブル依存の患者にも応用するというものだ。

 SBIRTSとは「Screening(依存程度の確認)」「Brief Intervention(短い介入、カウンセリング)」「Referral to Treatment(専門医療者への紹介)」「Self-help groups(自助グループにつなげる)」の頭文字をつなげたもの。本来は、自助団体が医療機関と連携しながら、依存症の改善を目指す試みだ。常岡医師は、ギャンブルに対して、これを医療機関側からのアプローチに応用した。

 ギャンブル依存の患者にとって、自助団体には、医療機関とは違った「入りにくさ」がある。「依存から抜け出したい」と切望しても、自助団体に対しては「似たような人間が集まり、お互いの苦労話をしている程度だろう」「行っても意味ない」と考えがちになるからだ。

 「入りにくさ」というよりも、「入りたくない」「仲間になりたくない」という、感情的な抵抗感が先行してしまう。医療の限界を、患者全体で乗り越えるための効果的な仕組みなのに、患者の先入観が邪魔をしているわけだ。

 常岡医師は、自分の外来にやってきたギャンブル依存の患者に対しては、診察の場で必ずGAなどの自助団体に電話でアポイントを入れ、患者をつなげるようにしている。

 「ギャンブルの問題で医療機関に足を運んでくる患者さんは、本気で治したいと考えているマジメな人が多い。だから、患者さんの目の前で自助団体に電話して、その場でアポを取る。有無を言わせずに行ってもらうようにしています。行くことを勧めるだけでは、ほとんどの人は足を運んではくれませんから」と話す。

依存の陰に隠れている疾患も

 さらに、「ギャンブル好き」が「ギャンブル依存」へと変わる背景には、患者本人が精神神経系の疾患を抱えている場合が少なくなからずある。具体的には、うつやADHD(注意欠陥・多動性障害)、気分障害、発達障害、パーソナリティー障害などが、依存の陰に隠れているケースが散見されるという。

 常岡医師は言う。

 「ギャンブル依存で外来にやってくる患者さんは、高率でうつ病を発症しています。自殺念慮など、命の危険があるほどの重大な状態なら、無条件で入院治療を勧め、まずそちらの治療をします。逆に、元々、ADHDがあったり、不安障害があったりする人がギャンブルにはまり、借金などで自責的になって、うつになるケースも少なくありません」

 2009年の厚生労働科学研究「いわゆるギャンブル依存症の実態と地域ケアの促進」によると、ギャンブルで問題を抱えた人の62・1%に自殺念慮があり、40・5%には自殺企図があったとされる。

 医師が「病気なんだから仕方ない」と諭しても、「いや、自分が悪いんです」と思い込んで譲らず、自分を責めて、うつ状態に陥る患者。それが命にかかわる危険性もあるのだから、ギャンブル依存が軽視してはならない精神疾患であることがはっきりわかる。

常岡俊昭医師は、医療機関と自助団体の連携を

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染谷 一(そめや・はじめ)

読売新聞東京本社メディア局記者
 1988年読売新聞社入社、出版局、医療情報部、文化部、調査研究本部主任研究員、メディア局専門委員などを経て、2021年5月からメディア局メディア編集部記者。

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1件 のコメント

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永久ブラックリスト化を!

大ママ

夫はギャンブル依存症で、貸金協会に登録したこともあります。任意整理もしています。それでも、貸してしまうサラ金があります。 どうか、ギャンブル依存...

夫はギャンブル依存症で、貸金協会に登録したこともあります。任意整理もしています。それでも、貸してしまうサラ金があります。
どうか、ギャンブル依存症の患者に貸せない法律を作っていただきたい。

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