文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」

医療・健康・介護のコラム

「産むんじゃなかった。私の人生返して!」と母に罵られ…「すみません」が口癖 36歳女性の自己評価

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

家でも職場でも「言葉の暴力」を受け

 X江さんは自身の結婚後も、「言葉の暴力」を受け続けた。

 なりゆきで意気投合し、勢いで結婚した相手は、自己主張が苦手な彼女を、言葉の力で支配しようとしたのだ。「おまえはバカだ」「このごくつぶしが!」「さっさと死ね!」……。どこからわいてくるのかと思うほど、ひどい「口撃」が続いた。

 もとの家族も、現在の家庭も最悪だ、と思った。会社に行っても、心ない言葉から逃れられなかった。「なんか臭くない?」「近づかないで。ブスが 伝染(うつ) るわ!」。何もかもがイヤになった。

 会社をやめ、カウンセリングを受けるようになって、X江さんは、その「最悪」から抜け出しつつある。

 「離婚して、会社もやめて、安全なところで暮らすようになったら、自分がいかにひどい『暴力』を受けていたのか、よくわかるんです。この前、ひどいことを言った人たちをイメージして、反論してみました。『お父さんはバカ、お母さんもバカ、みんな、大バカ!』って、頭の中で一人一人に言い返してみたら、何だかスッキリしました。みんなバカですよね」

 そして、X江さんは、そこで一息ついた。

 「最近ようやく、『言葉の力』のすごさがわかるようになったんです。心のうちを、きちんと言葉にすればいいのに。苦しければ、苦しいって言えばいいのに。もっともっと、『言葉』を大切にすればいいのに……。カウンセリングを受けて、温かい言葉をかけてもらっているうちに、『言葉』って、本当は『癒やす力』をもっているんだって思えたんです」

最近見つけた「好きな言葉」

 彼女は、最近、一番好きな言葉を見つけたという。「ありがとう」だ。メールでもSNSでも、必ずどこかに入れるようにしているという。「連絡してくれてありがとう」「返事をくれてありがとう」「いつも思っていてくれてありがとう」。

 「一人一人に感謝していると、私の心も温かさに包まれているような気持ちになるんです」

 X江さんは、さわやかな笑顔でそう語ってくれた。

 「先生にも『ありがとう』です。でも、安心しちゃいけませんよ。言葉の問題は、まだまだ奥が深いんですからね!」

 おっと。今日はこちらが説教されてしまったようである。(梅谷薫 心療内科医)

 *本文中の事例は、プライバシーに配慮して改変しています。

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20181127-yomusuri-prof200

梅谷 薫(うめたに・かおる)

 内科・心療内科医
 1954年生まれ。東京大学医学部卒。90年から同大学で精神科・心療内科研修。都内の病院の診療部長、院長などを経て、現在は都内のクリニックに勤務。「やまいになる言葉~『原因不明病時代』を生き抜く」(講談社)、「小説で読む生老病死」(医学書院)など著書多数。テレビ出演も多い。

心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」の一覧を見る

3件 のコメント

コメントを書く

生きづらさ

Koko

自分が、どのような思いの中で生まれてきたのか、私の中にある、不安や恐れ悲しみ。実は私の思いというより、両親の結ばれた時の心情が、今の私の潜在意識...

自分が、どのような思いの中で生まれてきたのか、私の中にある、不安や恐れ悲しみ。実は私の思いというより、両親の結ばれた時の心情が、今の私の潜在意識として私自身の人生を左右しているということに、最近気づきました。父も、好きな人がいたのに、母とお見合いをさせられ、結婚をさせられました。しかし、結婚届を出ししぶりましたが、私がおなかの中に宿ったので、仕方なく、届けを出しました。なので私は、戸籍上、十月十日ではなく月足らずで生まれてきたようになっていると、母が昔、話してくれました。結婚後も、父はその相手とは縁を切ることもなく、相手にも家庭があるまま、20数年間私と母をだまし続けました。言葉の暴力こそありませんでしたが、私自身の自己肯定感の低さは父からの無言のマイナス感情からきていると思います。

つづきを読む

違反報告

言われたくない言葉

まるこ

私も、母に「産むんじゃなかった」と言われて育ちました。悲しいです。自分を産んだ人にそう言うふうに言われるのですから。両親は離婚しているので、お父...

私も、母に「産むんじゃなかった」と言われて育ちました。悲しいです。自分を産んだ人にそう言うふうに言われるのですから。両親は離婚しているので、お父さんがいない寂しさも恥ずかしさもあり、子ども時代は不遇だったなぁと思います。母は、私が何かしでかすと、ことあるごとに、「お前は父親そっくり。父親のところへ行ってしまえ」と言っていました。捨てられる恐怖を感じていたように思います。
自分には家庭運がない、そして、自分もそういう親になるんじゃないか。と言う思いから、家族を持つことは諦めました。なにより、たった1人の親に存在を否定されて育ったことで、自分は誰からも愛されない存在なのだと思わずにはいられず、なかなか、自己肯定感を高められません。

子ども時代にしっかりら愛されて大人になるということが、人生にとってどれほど大切なことなのか、日々、思っています。

つづきを読む

違反報告

どうしようもないこと

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

よくありますよね。 人のせいにするなとか、親に感謝しようとか、そういう当たり前のこと自体が実は恵まれている環境だと多くの人にはわかりません。 だ...

よくありますよね。
人のせいにするなとか、親に感謝しようとか、そういう当たり前のこと自体が実は恵まれている環境だと多くの人にはわかりません。
だから、しばしば、人間関係はこじれます。
そういう事を理解すると、かえって奇異な目で見られることもあり、これもまた社会での立ち位置が難しいものです。

時々思いますよね。
子供の目がキラキラしているのはなぜですか?
それは何も知らないからです。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事