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大人の健康を考える「大人び」

医療・健康・介護のコラム

不眠症(9)睡眠薬 副作用に注意

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  このシリーズでは、日本睡眠学会認定医で、上島医院(大阪府大阪狭山市)院長の渥美正彦さんに聞きます。(聞き手・古川恭一)

不眠症(9)睡眠薬 副作用に注意

 不眠治療で最初に始めるのは、薬の服用ではありません。まずは不眠の原因になる行動を見直し、眠りにつながる新しい習慣に取り組むことが大切です。例えば4時間しか眠れなかった人には、翌日布団で過ごす時間を、その1・1倍の4・4時間程度にするよう指導します。そうすることで、睡眠の質が改善できます。

 とはいえ、不眠は仕事に差し障るだけでなく苦しみも伴うため、症状を抑える睡眠薬も有効です。よく使われるのは「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」と呼ばれる薬で、基本的には脳内でアルコールと同じような働きをします。脳の活動を落ち着かせて寝入りをよくするほか、筋肉を 弛緩しかん させて肩こりを和らげたり、不安な気持ちを鎮めたりする作用もあります。

 短期間の服用なら安全性は高いのですが、負の側面も持ち合わせているので注意が必要です。

 脳の鎮静作用は、薬を飲んだ後の行動を忘れる「健忘」を引き起こします。お酒で酔ったときの記憶がないのと同じですね。筋肉が緩むと、特に高齢者では転倒の危険性が高まります。不安を和らげる働きも、薬がないと逆に心配になってしまうことから、依存症につながりやすいとされます。

 ある70歳代女性は、このタイプの睡眠薬を服用していたところ、ふらついて転びやすくなりました。そこで、脳の鎮静作用がなく、ふらつきも起こさない新たな薬に切り替えて、薬の量も少しずつ減らした結果、筋肉が締まって転倒しにくくなり、表情や姿勢もよくなりました。

【略歴】
渥美 正彦(あつみ まさひこ)
大阪市立大学医学部卒業。大阪警察病院、国立病院機構やまと精神医療センター、近畿大学医学部付属病院神経内科などを経て、2004年6月から上島医院。05年に同医院併設南大阪睡眠医療センター長。10年から同医院院長。

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