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【意思決定】高齢者の「選択」(1)残る役割を見据えて

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【意思決定】高齢者の「選択」(1)残る役割を見据えて

「日野わかくさ幼稚園」園長の清水さん。「園児とのふれあいが人生の喜び」だ(東京都日野市で)=萩本朋子撮影

 清水 博雅はくが さん(93)は、「日野わかくさ幼稚園」(東京都日野市)の現役園長と、真照寺(同)の住職を兼務する。81歳で前立腺がんを患った。

 担当医は、体の負担が少ないホルモン療法を勧めた。「5年で効果が切れますが、いい年ですからね」と、言葉が継がれた。もう十分に生きた、その時が寿命だとほのめかすような物言いに、清水さんの心はざわついた。

 19歳。終戦間近の満州(現中国東北部)で、旧ソ連軍の戦車に地雷を抱えて飛び込む「人間地雷」を命じられた。深さ1メートルの 塹壕ざんごう に身を潜め、特攻の時を待った。死の恐怖に身もだえした。戦車は来なかった。

 戦後は、中学校の社会科教諭を経て寺を継いだ。教え子で13歳下の妻(享年37歳)を、当時は不治の病だった白血病で亡くした。患者に告知をしない時代。妻の病気を一人、胸にしまった。「3人の子どものために」と、以来、人間ドックを毎年、受けた。死は遠ざけるべき存在だった。

 55歳で胃がんになり、胃の4分の3を切除した。まだ死ねない、と感じた。

 80歳を過ぎての前立腺がん。もはや死の予感にうろたえることはなかった。けれど、自分にはまだ、役割がある。園児に習字やあいさつを教え、 檀家だんか の世話を誠実にこなすことだ。寿命や治療の判断は自分がする。他人が決めることではないはずだ。

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