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山崎まゆみの「心もとろける癒やしの温泉」

健康・ダイエット

乳がんの傷痕なんか気にせず、温泉に行こう!

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手術後の温泉入浴へ細やかなサービスが

 「HERO」「What a feeling~FLASH DANCE」などのヒット曲で知られる歌手の麻倉未稀さんは、自らの闘病体験に基づき、乳がんへの理解が深まるようにと啓発活動に力を尽くされています。そんな麻倉さんから、「ピンクリボンの宿がもっと知られればいいのに」とご連絡をいただいたことがあります。私が書いた「ピンクリボンのお宿ネットワーク」の記事をご覧になってのことでした。

 旅行新聞新社が事務局となっている「ピンクリボンのお宿ネットワーク」は、乳がんなどの手術後、傷痕が気になり、旅をあきらめてしまっている女性に、もう一度、温泉入浴を楽しんでもらいたいという目的から立ち上げたものです、

 2012年7月に発足して以来、現在は北海道から沖縄までの約112軒の旅館が名を連ねています。「貸切風呂あり」「露天風呂付客室あり」「大浴場に間仕切りあり」「入浴着の着用可能」「入浴着の販売・レンタルをしている」「タオルを多めに用意している」「脱衣所の明るさが調整できる」など工夫をしている施設ばかりです。

 「女将自身が乳がんを患う」「親族に患者がいる」という理由で参加している旅館もあるので、サービスはとても細やかです。

乳がんの傷痕なんか気にせず、温泉に行こう!

石川県和倉温泉・加賀屋

同じ傷痕がある女性同士なら

 長野渋温泉湯本旅館の 女将(おかみ) 、湯本英里さんはこんなご自身の体験を話してくれました。

 「10年前に乳がんが発覚した時はステージ3Bだったんです。医師からは『術後は胸や肩が突っ張る感覚が残るから、リハビリが必要になる』と言われました。ところが、毎日、湯本館の温泉に入って、腕を回しているうちに、突っ張り感がなくなって、結局、リハビリは必要ありませんでした。もちろん個人差はありますが、私の経験を知ってほしいと思っています」

 女将はご自身の経験を踏まえ、「似たような傷痕がある女性同士ならお風呂で一緒になってもさほど気になりませんしね。また、同じ悩みを抱える家族同士で交流のきっかけになればいいなと思います」と、毎月の第3金曜日は患者とその家族だけで貸し切りにしています。

 1泊2食9千円の「ピンクリボンプラン」も大人気だそうです。

周囲を気にしないための配慮を

 ちょっとした気遣いがうれしい施設もあります。

 石川県和倉温泉の加賀屋では、薄い紫色のシルクのショールが大浴場の脱衣所に置かれてあり、傷痕を覆えるようにしています。マフラー程の大きさで、軽く、さらりとした肌触り。きっと水にぬれても重たくならずに、浴場で羽織ることも苦にならないのだと思います。目立たないような色もすてきな配慮です。

乳がんの傷痕なんか気にせず、温泉に行こう!

シルクのショールなら傷痕だって大丈夫

 本来は共同の浴槽でタオルや手ぬぐいを使うことはマナー違反です。

 でも、新潟県妙高山麓温泉郷(赤倉温泉、池の平温泉、妙高温泉)の16軒の宿では、特別なガーゼタオルが1枚500円で用意されており、それなら浴槽内でも使用OKです。「Myoko Think Pink」と書かれており、「手術などで体に傷がある方も、温泉入浴を (たの) しんで (いただ) きたい。このタオルは浴槽の中で使用しても衛生上の問題は一切ありません」と掲示されています。

乳がんの傷痕なんか気にせず、温泉に行こう!

赤倉温泉香嶽楼の露天風呂

 赤倉温泉・ 香嶽楼(こうがくろう) の女将、村山美枝子さんは、「私が婦人科での入院中、同室になった患者さんから『大きなお風呂にざぶ~んと入りたい』『温泉につかるまでは傷痕を隠せるが、入浴中はどうしても……』と聞きました。そこで、退院後に女将会でとりまとめて、湯船に持ったまま湯船に入ることができる専用ガーゼタオルをつくりました」と話してくれました。

乳がんの傷痕なんか気にせず、温泉に行こう!

Myoko Think Pink

 これらの取り組みの取材は、私自身の経験がきっかけになっています。2016年に子宮内膜症の手術をした後、湯治をした時に、温泉は傷痕を回復させてくれる以上に、心も癒やすことを実感したからです。傷痕が治るか不安だったとき、湯治場で似たような傷を持つ人との会話に救われるおもいでした。また、湯治宿で話を聞いてくださったご主人や女将も、いわば私にとって、“第二の主治医”だったのです。

 女性特有の病気はとてもデリケートです。目に見える傷以上に、心の傷も大きい。失ってしまったモノが大きければ大きい程、その傷を癒やし、心の穴を埋めるように寄り添ってくれるのが温泉です。

渋温泉湯本旅館
【 所在地 】〒381-0401 長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2218
【 電 話 】0269-33-2181
【 泉 質 】内湯・単純泉(中性低張性高温和泉)、露天風呂・硫酸塩泉
【 効 能 】高血圧、リウマチ、神経痛、婦人病、皮膚病
【アクセス】長野電鉄線湯田中駅下車、バスかタクシー(電話連絡で送迎あり)
【ホームページ】http://www.sibu-yumoto.jp/

赤倉温泉香嶽楼
【 所在地 】〒949-2111 新潟県妙高市大字赤倉115
【 電 話 】0255-87-2036
【 泉 質 】硫酸塩・炭酸水素塩泉
【 効 能 】疲労回復、神経痛、慢性リウマチ、皮膚病、やけど、美肌
【アクセス】しなの鉄道北しなの線 妙高高原駅下車
【ホームページ】https://myoko-kougakuro.jp/

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yamazaki_mayumi_prof

山崎まゆみ(やまざき・まゆみ)
温泉エッセイスト、ノンフィクションライター、VISIT JAPAN大使、跡見学園女子大学兼任講師。世界32か国1000か所以上の温泉を巡り、「温泉での幸せな一期一会」をテーマに各メディアでリポートしている。『続・バリアフリー温泉で家族旅行』(昭文社)等著書多数。最新刊は『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!』(河出書房新社)。内閣官房東京オリンピック競技会・東京パラリンピック競技会推進本部事務局「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会」「ユニバーサルデザイン2020評価会議」に参画し、日本の「バリアフリー温泉」の推進に力を注いでいる。温泉情報はTwitter、FB、インスタグラムで更新中。

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