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夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか

医療・健康・介護のコラム

「腎移植後、相手のことが嫌いになったらどうする?」…質問への私の答え

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 秋めいた肌寒さを感じて、目を覚ました。3~4時間、別室で仕事して再びベッドに戻ると、夫が寂しそうに抱きしめてくれた。私を、というより、私のおなかにある「夫の腎臓」を抱きしめた感覚があった。本来、生まれて死ぬまでつながりあっていたはずの二つの腎臓。生き別れのような状態にしてごめんなさい……と複雑な気持ちになる。

 妙なことだとわかっている。「臓器にも記憶や感情があるのではないか」と錯覚する時があるのだ。

 例えば、泊まりの出張のとき。夫の腎臓と物理的な距離が離れているせいか、落ち着かなくて眠れなくなる。対策として、オンライン電話でつながって、夫の気配を感じながら目を閉じる。すると、10分もせず深い眠りにつける。

 こんなこと、移植前にはありえなかった。そのうち、私が知らない夫の記憶が、ふんわり夢に出てくる……なんてことがあっても、きっと私は驚かないと思う。

親子間より夫婦間の方が多くなった腎移植

 近年、健康な人から腎臓を提供してもらう「生体腎移植」で、血のつながりがない夫婦間の腎移植が増えている。免疫抑制剤の開発と組織適合性検査の進歩のおかげだ。

 「日本臨床腎移植学会・腎移植臨床登録集計報告(2018)」によると、2017年に夫婦間で実施された例は、全体の1429例中、566例(39.6%)。親子間の531例(37.2%)や兄弟・姉妹間の150(10.5%)を上回り、1位となっている。 

 

「日本臨床腎移植学会・腎移植臨床登録集計報告(2018)』より抜粋

 私の主治医である東京女子医科大学病院の石田英樹先生はこう説明する。

 「夫婦間腎移植は、2000年ごろまでは我々医師の間でもタブー視されていたところがあります。単純に血縁ではないからです。今でもあたりまえではないかもしれません。しかし私は、夫婦で、というのは良いのではないかと思っています。生涯、生活を共にする伴侶なのですから」

 夫婦は、運命共同体だ。夫が病になろうと、妻が病になろうと生涯を共にする。

 11年前、東京・市ヶ谷のチャペルで式をあげた。「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」。私と夫は「誓います」と形式的に言ったのだが、それがどういうことなのか、夫からの移植を受けて、ようやく理解できた気がする。

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もろずみ・はるか

医療コラムニスト
 1980年、福岡県生まれ。広告制作会社を経て2010年に独立。ブックライターとしても活動し、編集協力した書籍に『成約率98%の秘訣』(かんき出版)、『バカ力』(ポプラ社)など。中学1年生の時に慢性腎臓病を発症。18年3月、夫の腎臓を移植する手術を受けた。

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