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オーバートレーニング症候群…中高生の発症も目立つ

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 スポーツ選手は、練習のし過ぎで、成績不振や心身の不調をきたすことがある。オーバートレーニング症候群と呼ばれる状態だ。Jリーガーや柔道男子の五輪メダリストらが発症を公表しており、トップ選手の問題と思われがちだが、中高生の選手にも少なからず起きていることがわかってきた。(原隆也)

オーバートレーニング症候群…中高生の発症も目立つ

  中学トップ級半数

 スポーツ選手は、練習の疲れを休息で回復させ、さらに回数や量を増やした強めの練習で体に負荷をかける。この繰り返しで、階段を上るように身体機能を高めるのが理想だ。

 だが、疲れが十分抜けないまま練習を重ねると、かえって成績不振に陥るおそれがある。

 20歳代の男子長距離走選手は、数年前、原因不明の頭痛や発熱に悩まされた。練習を続けてレースに出場したが、少し走っただけで息が上がり、途中棄権した。

 その後、軽いジョギングでも気分が悪くなり、北里大学メディカルセンター(埼玉県北本市)を受診した。医師の指導で、本格的な練習は控え、軽いウォーキングにとどめて十分に休み、3か月後に通常の練習ができる状態に回復した。

 同センター精神科副部長の山本宏明さんによると、こうしたスポーツ選手特有の不調をオーバートレーニング症候群と呼び、実態把握や対策が進んでいる。不眠や抑うつ、情緒不安定など精神症状があれば、睡眠薬や抗うつ薬を処方することもある。

 日本陸上競技連盟が2016年度に行った中学生へのアンケートでは、陸上の全国大会出場者の5~6割が、疲れやすさやだるさ、不眠など、あてはまる症状を自覚したことがあると答えた。

 13~14年度の高校生への調査では、地区大会出場選手を含め、1~3割が該当し、駅伝選手に多くみられた。症状があった高校生のうち、治療を受けたのは2~3割にとどまった。

 山本さんは「スポーツ選手は健康的で強くなくてはならないという意識や周囲から期待されるイメージが受診の壁になっている」と指摘する。受診する選手の多くが、体調不良に気づいたチーム関係者の勧めによるものだ。診断され、十分な休養を促しても、「けがでもないのに」と選手や関係者が難色を示すことが多いのも課題だという。

  選手生命にかかわる

 選手が異変に気づく簡単な方法は、脈拍のチェックだ。心身の不調があると、安静時の心拍数が増えることがある。自律神経の乱れによるものだ。毎日、起床時に1分間の脈拍をとって記録すると変化がわかる。

 指導者も、選手とやりとりするトレーニング日誌に、練習意欲や食欲、睡眠状態を○×△で記入してもらい体調把握に努めよう。

 山本さんは「選手生命にかかわるので、予防や早期の治療が若い選手の将来を守ることにつながる」と話している。

 日本スポーツ協会公認の精神科や心療内科を専門とするスポーツドクターまたは、日本スポーツ精神医学会に所属する医師が受診先の候補になる。

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