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Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」

医療・健康・介護のコラム

避けたつもりの解熱鎮痛成分で喘息発作 市販薬選びの難しさ

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 今回は (ぜん)(そく) のケースをとりあげ、市販薬選びの難しさの一例をご紹介します。

イラスト 奥山裕美

イラスト 奥山裕美

 40代女性。30歳頃から喘息発作が出るようになりました。かぜをひくと喘息発作が出やすく、その都度、診療所を受診していました。医師は解熱鎮痛薬を処方する場合、喘息のことを考慮して、エヌセイド(注)に該当する成分を避け、アセトアミノフェンを使う方針としていました。

 ある土曜日、女性はのどに痛みが出て、その後、発熱と節々の痛みがみられるようになりました。診療所は休診だったので、夫が服用している市販の解熱鎮痛薬が使えないかと、成分欄を見てみました。その成分欄にアセトアミノフェンと書かれていたので服用したのですが、20~30分ほどして、突然、喘息発作が出たため、救急外来を受診しました。

 (注)エヌセイドは、非ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性消炎鎮痛剤、NSAID(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug)、NSAIDsなどと称されることもある。市販薬では、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アルミノプロフェン、イブプロフェン、エテンザミド、サリチルアミド、ロキソプロフェンなどが該当する。

一部の喘息患者では要注意なエヌセイド

 一部の喘息の患者では、エヌセイドが喘息発作を誘発する頻度が高く、まれに致死的な経過をたどることもあります。そのため、このケースの医師は、エヌセイドを避ける方針としていました。ところが、この女性が服用した市販の解熱鎮痛薬には、アセトアミノフェン以外にもうひとつ、エヌセイドも解熱鎮痛成分として含まれていました。つまり、診療所では避けていたエヌセイドを服用してしまい、喘息発作が出てしまったのです。

 その市販薬には、解熱鎮痛成分がひとつしか含まれていないと女性が思い込んだことが“落とし穴”となってしまったのですが、市販薬に限らず、複数の解熱鎮痛成分が入っているかぜ薬や解熱鎮痛薬は結構あるのです。

 女性は回復し、後日、アセトアミノフェンでは喘息発作を誘発しないことも確認され、エヌセイドによるアスピリン喘息と診断されました(解熱鎮痛成分の中では、アセトアミノフェンは比較的、喘息発作を誘発しにくいとされていますが、まれにアセトアミノフェンで喘息発作の出る方もおられます)。

「アスピリン喘息」という呼び名も

 アスピリン喘息について説明します。エヌセイドであるアスピリンの服用で喘息発作が出る場合があることは古くから知られており、「アスピリン喘息」と呼ばれています。アスピリン喘息の方は、他のエヌセイドでも喘息発作をきたすことが知られており、解熱鎮痛薬喘息と呼ぶ方が注意喚起には良いのですが、広く使われている用語でもあり、今でもアスピリン喘息と呼ばれています。厚生労働省には「非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作」という患者向けの読み物がありますので、ご関心のある方はぜひともお読みください。

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dr.hira-prof150

平 憲二(ひら けんじ)
 1966年、宮崎県生まれ。総合内科専門医。株式会社プラメドプラス代表取締役。91年、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒。2001年、京都大学大学院医学研究科博士課程内科系専攻修了(臨床疫学)。03年、京都大学病院総合診療科助手。05年に株式会社プラメド、13年に同プラメドプラス設立。著書に「クスリ早見帖ブック 市販薬354」(南山堂)、「クスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方」(PHP研究所)、「クスリ早見帖ポッケ かぜ・解熱鎮痛・咳止め・鼻炎の市販薬」(大垣書店)。

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