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気象予報士ママの「健康注意報」 新見千雅

医療・健康・介護のコラム

うっかり忘れた防寒対策、秋雨に濡れた服…子どもの低体温症に注意

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体の内部の「深部体温」が30度まで下がる…意識障害につながる恐れも

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 低体温症というと、冬の登山などで引き起こすイメージが強いかもしれませんね。

 実は、たとえ夏の暑い時期であっても、雨に濡れたり、長時間の海水浴やプール遊びをしていたりなどの条件によっては、低体温症となる可能性があります。

 これからは秋が深まり、冬にかけて季節が移り変わる時期には、次第に気温の低い日が多くなります。うっかり防寒対策を忘れた日に雨に濡れてしまうことがあるかもしれないので、油断はできません。冬になればもちろん、常に注意が必要でしょう。

 もし長時間体が濡れている状態が続き、脳や内臓など体の内部の「深部体温」が35度以下になると、末梢血管の収縮や、筋肉の震えがより一層強くなり、多くのエネルギーを消耗します。しかし人間のエネルギーには限りがあるため、体を温めるなど適切に処置をしなければ、体温の低下はさらに進んでしまいます。

 実際には重症化する前に大人が気づいて、治療に至るケースがほとんどですが、万が一深部体温が30度まで下がると、心臓が規則正しく動くことが困難になってきます。心臓は全身に酸素や栄養を運ぶ血液を送り出しているので、呼吸もコントロールしにくくなり、意識障害につながる恐れもあります。

 雨に濡れた時はなるべく早く暖かい環境で、体を拭いて着替えたほうがいいですね。

 体が濡れたままの状況が続く時は、多くのエネルギーを消耗するので、普段の子どもの様子と変わりがないか、注意してみることが重症化を防ぐことにつながるでしょう。

レインコートと長靴で…弱い雨の日に「雨のしのぎ方」体験

 とはいえ、雨そのものを避けて生活するのは難しいですよね。

 日常生活での自然との関わりは、子どもの自立心や感性、想像力などを育むと言われています。1時間の雨量が3ミリ・メートル未満の弱い雨で、なおかつ風が穏やかな天気の時は、幼児が自分用の小さな傘を持ちやすいので、レインコートと長靴でなるべく濡れないようにすれば、雨のしのぎ方を体験しやすくなるでしょう。乳児も、抱っこ (ひも) などでお出かけして、雨音を聞かせて楽しむのもいいかもしれませんね。

 子どもの好奇心は止められないこともあるので、濡れてしまった時のタオルと着替えも忘れずに。

 (監修 鈴木孝太・愛知医科大学医学部教授)

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気象予報士ママの「健康注意報」

新見 千雅(にいみ ちか)
日本気象協会 気象予報士

 呼吸器、透析分野で看護師として勤務した後、気象会社で原稿の作成やラジオ番組を担当。現在は、日本気象協会と株式会社JMDCが進めている、気象データとレセプト(医療報酬の明細書)データを使って、様々な疾患の発症・重症化リスクに関する情報を提供するサービス「Health Weather(R)(ヘルスウェザー)」プロジェクトに参加している。
 2児の母として、妊娠・出産・育児にまつわる天気のコラムを執筆中。


鈴木 孝太(すずき こうた)
愛知医科大学医学部 衛生学講座 教授

 1974年、東京都生まれ。2000年、山梨医科大学医学部卒。2005年、山梨医科大学大学院医学研究科修了(博士(医学))。2011年 、University of Sydney Master of Public Health (MPH) Coursework修了。山梨大学医学部助手、助教、特任准教授、准教授を経て、2016年から現職。専門分野は周産期から小児期にかけての疫学、産業保健、ヘルスプロモーション。
 最近は、「Health Weather(R)」と共同で、気象と健康に関する研究を実施している。



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