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明るい性の診療室

妊娠・育児・性の悩み

目が覚めて枕元に赤ちゃんがいたらいいのに―性機能障害の女性たちの切なる願い―

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大川玲子(婦人科医)

 「枕元に赤ちゃんが……」は、コウノトリが赤ちゃんを運んでくるという伝説からの生まれるイメージでしょう。

 性機能障害は「セックスがうまくいかない状態」をいい、「性外来」はセックス・セラピーを通じ、この障害の解決を目指します。ただ、性外来を訪れる女性の多くは、「セックスを楽しめない」のではなく、「何とか性交して妊娠したい」という思いを抱えて来られます。

 セックス・セラピーを始めた頃の筆者は、妊活の一環で「不妊」の解決を求めて性外来に来る方の多さに驚きましたが、状況は30年間ずっと変わりません。

不妊カウンセラーの活躍に期待

 不妊症は「妊娠を希望し、避妊せずに性交しているのに1年以上妊娠しない状態」ですが、性交できない人の「不妊外来」受診も増えています。人工授精や、体外受精など、性交によらない技術が一般に受け入れられてきたことも理由と思われます。不妊治療は、目標が妊娠・出産ですから、医療に必要な検査・治療を受けられれば対応します。

 不妊外来に通う多くの患者さんは、性機能障害とまでいかなくとも性の悩みを持っています。診療を受ける目的の中心には置いていないためか、悩みを打ち明けられず、不満を感じている人もいます。

 患者の相談先として、日本不妊カウンセリング学会で養成している「不妊カウンセラー」に、筆者は注目しています。不妊外来の多忙さと、カウンセラーの活動が診療報酬に位置付けられていないことから、性機能障害への対応までは難しいですが、性の相談に乗るセックス・セラピストの少なさを考えると、不妊カウンセラーの活躍は大いに期待するところです。

難しい性外来と不妊外来の両立

 ちつに男性器が入らない「挿入障害」の人は、診察を目的とした器具や医師の指を入れる婦人科的な診察を受けることが困難で、不妊外来から性外来に紹介されます。

 逆に性外来を受診する人が、婦人科診察ができるくらいになると、セックスより妊娠を優先し、不妊外来に移る人も少なくありません。その時に、性外来も並行して続けたいというご希望もありますが、並行しての治療は原則としてお勧めしておりません。不妊外来の治療はかなり集中力を要するものですし、セックス・セラピーはいわば「自己との闘い」で神経を使い、両立は難しいためです。

性外来で「妊活」に成功

 最後に、性外来で妊活に成功した事例を紹介したいと思います。

 以前、筆者のもとを受診したCさん(結婚8年、37歳)は、痛みへの恐怖が原因で男性器の挿入ができない挿入障害でした。夫婦の関係は良く、性交のないことでは、夫は不満を言いませんでした。むしろ女性の方が、妊娠が難しくなる年齢を意識し、性外来を受診しました。

 1年近い治療で挿入への抵抗感は和らぎ、ご本人、そして夫の指1本が入るようになりました。ここで、Cさんは出産までの道のりが不安になり、焦りを感じました。

 幸い月経は順調で排卵もあるので、筆者は「シリンジ法」を提案しました。これは精液をシリンジ(注射筒)で腟内に送り込む方法です。指1本と同じか、より細い注射筒を使用します。自宅で、指などの挿入の練習と同じ要領でできますし、結果は腟内射精と変わりません。

 Cさんはまず注射筒で精液を送る手技を練習し、ついで排卵のタイミングで行うようになり、数回で妊娠しました。

 挿入障害の患者さんが治療の途中で妊娠した場合に、妊婦健診の受け方は様々です。赤ちゃんの成長などをおなかの上から診る超音波検査は問題なくできますが、婦人科診察が終始できない人はいます。出産では、赤ちゃんは勝手に出てきます。性交や婦人科診察ができないという理由での帝王切開はありません。

 出産しても、その後、男性器を受け入れられるようになるかというと、ほとんどの人ができないままです。出産と性交は意味が違うようです。

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明るい性の診療室
大川玲子先生

大川玲子(おおかわ・れいこ)
千葉きぼーるクリニック婦人科医師
 1972年、千葉大学医学部卒業。同大助手、国立病院機構千葉医療センター(旧国立千葉病院)産婦人科医長などを経て、2013年から現職。日本性科学会理事長、NPO法人千葉性暴力被害支援センターちさと理事長。

今井伸(いまい・しん)
 聖隷浜松病院リプロダクションセンター長、総合性治療科部長
 1997年、島根医科大学(現・島根大学)卒業。島根大学助手、聖隷浜松病院泌尿器科主任医長などを経て、2019年4月から現職。日本性科学会幹事、日本性機能学会評議員、日本泌尿器科学会指導医、島根大学臨床教授。

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