思春期の子どもを持つあなたに
コラム
第9部 摂食障害(上)「自分を磨くため」のダイエットが「食べることが怖い」に。中3女子の内面に起きたこと
一般的に摂食障害というと、「拒食症」や「過食症」によって、日常生活に問題が生じている症状が思い浮かぶ。ただし、体重が正常範囲内であったり、不適切な代償行為(別のことで欲求を満たそうとする行動)の頻度が低かったりと、一般の診断基準を満たさないケースもある。
摂食障害だけではなく、思春期の心の問題については、医療機関が用いる診断基準に合致しないこともしばしばある。そのような場合、大切なのは病名ではなく、「自分の力で大人への発達の道筋を歩めているかどうか」である。
太りたくない気持ちとは関係なく
A子さんは首都圏に住む中学3年生です。「もっと自分を磨きたい」と、中学2年の春頃からダイエットを開始しました。そのうち、「太りたくない気持ちとは関係なく、食べることが怖い」と言い出して、食事を避けたがるようになりました。
著しい体形の変化や体重減少はありません。それでも、きちんと食べなくなった我が子を心配した両親が、クリニックに相談に来ました。
私との面接中、話をリードするのはほとんどが父親でした。
A子さんが自宅で話す内容や日頃の行動、それに内面の気持ちや考え方なども、すべて父親が説明しました。母親にも意見を聞こうとしましたが、父親の顔色をうかがいつつ、最低限のことしか話してはくれませんでした。ちなみに、A子さんには3歳年上の姉がいますが、海外留学中のため、現在は3人暮らしです。
まず、A子さん本人は、父親と決めた第1志望の中学に進学できなかったことを気に病んでいたようです。それに加え、所属していたテニス部でも、大きな大会の出場直前に負けてしまったことがショックだったようで、「私は何をやってもダメなんだ」と完全に自信を失っていたとのことでした。とはいえ、学校には通っていて、友達もたくさんいるようです。
「食べることが怖くなった」と訴えるようになったことから、かかりつけ医に診てもらったところ、身体的に大きな問題は出ていないとのことでした。つまり、「問題なし」でした。
ただし、自宅近くには精神科や心療内科のクリニックがなかったため、「食べることが怖い」と言う娘に、はっきりした診断がつかなかったことで、両親の不安は完全には消えなかったわけです。クリニックにやってきたときも、父親は「自信を回復できれば、食事の問題も解決すると思う。ただ、心配なので念のため相談に来た。本当は娘を連れてきて受診させたい」と言いました。
そこで私は、「ご本人が希望するなら。そうでなければ、ご両親でいらして下さい」と伝えたところ、A子さんは「学校を休まないですむのなら」とのことで、冬休みの間に、父親に連れられてクリニックにやってきました。
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