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毒蝮流回想のススメ…毒蝮三太夫さん

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毒蝮流回想のススメ(中)~「生きていたかった明治維新。徳川慶喜に西郷隆盛、いろいろ語れたのに」

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年寄りは知識と経験の宝庫と話す毒蝮さん(小林武仁撮影)

年寄りは知識と経験の宝庫と話す毒蝮さん(小林武仁撮影)

 昔の出来事を思い出す回想の楽しさについて毒蝮三太夫さん(83)に語ってもらうインタビューの2回目。毒蝮さんは、お年寄りはみんな貴重な歴史の証人と考えている。半世紀以上続くラジオの生中継でも、参加者に高齢の人を見つけると、「生まれはどこだい」「家は何やっていたんだ」と質問を重ねる。たくみな話術で記憶を引き出し、その場を盛り上げていく。そんな風に回想で引き出されたお年寄りの話には、見たものにしかない重みがあるのだという。

見ている人しか語れない、歴史を語る

 80歳を過ぎた俳優の宝田明さんや仲代達矢さんが、悲惨な戦争体験を語っているよね。若い頃は戦争のことを話さなかった年寄りも80歳、90歳になって戦争を語り始めることがあり、周りにいる我々も「あっ、そういう話は聞かなきゃ」という風潮になってきた。年寄りの体験を聞く大切さをみんなわかってきたんだな。

 実際に体験した、見たっていうのは、本で読んだとか、人に聞いたというのとは全く違うんだ。漫才師のコロムビア・トップさんと会ったときのことだ。「おいマムシ、沢村の球を見たことあるか」って言うんだよ。あの、伝説の剛速球、巨人の沢村栄治投手(1917-44年)だよ。「早かったぞ、160キロはあった」とか言うんだけど、俺見ていないから、悔しい。だから、「いやだな、トップのオヤジ。ウソつくなよ(笑)」なんて言えない。見たことがあるっていうのは、それだけ強いんだよな。説得力がある。

 69連勝した元横綱の双葉山(1912-68年)の膝に抱っこされたことがあると言うババアもいたな。双葉山というのは、沢村と同じように、オレにとっては歴史上の人物ですよ。歴史上の人物を我がこととして語れるっていうのは、うらやましいよね。

年寄りは知識や経験の宝庫

 そう考えるとオレねえ、明治維新の頃に生まれていたら面白かったと思うね。坂本龍馬とか高杉晋作とか、吉田松陰とか、そういう人たちに会って話したことがあったら、いろんなことが言えるじゃない。西郷隆盛にはこういうところがあったんだよ、徳川慶喜はいい (やつ) だったよ、とかね(笑)。

 江戸から明治にかけての1860年代、70年代を生きた人というのは、大変なものを見ているんだよね。江戸城の無血開城とかいうけれど、江戸の街は本当は大変だったんだとか、そういう話ができる年寄りがいたら楽しいなと思う。だから、俺も明治維新に生きていたら、ずいぶんと面白いことが語れただろうなと思うんだよ。

 年寄りは知識や経験の宝庫、図書館だっていう人もいる。今、にこやかに笑っている年寄りをあんまり見なくなっちゃった。年寄りは生産性がないなんて思っている人もいるみたいだけど、国の年寄り政策が問われているよ。定年を延ばして、働ける人は働いてもらい、そうでない人も経験や知識をなるべく生かせるようにしてもらいたいよね。元気な年寄りを増やさないと、この国に未来はないよ。

昔を思い出すことで、話に花が咲く

 ラジオの中継では、いろんな話が飛び出すよな。何年か前、ジジイに「どこの生まれだ」と聞いたら、「山梨の富士吉田だ」と言うんだ。「富士吉田か、よく行ったよ。火祭りとか、うどんもうめえよな」と俺が知っていることを全部話すと、「そんなに話してくれる人はいなかった」と (うれ) しそうだった。そこで、「富士五湖をぜんぶ言ってみな」とクイズを出した。ジジイは四つの湖を答えたあと、最後に西湖の代わりに芦ノ湖と言った。生放送中だ。「ちょっとお前、芦ノ湖は富士五湖じゃないだろう。西湖が抜けているだろ。忘れちゃかわいそうだよ」って言うと、このジジイ、「えっ、俺が生まれたときは西湖はなかった」って抜かしやがるんだ(笑)。

 ジョークで返すなんてナイスガイだよ。そう思わない? 「そうか、お前の生まれたときはなかったのか。でもな、西湖を入れてあげようよ」といって盛り上がって終わったな。昔のことを思い出したり、みんなが知っていることを話題にしたりすると、話に花が咲くんだよ。そこをオレは言いたい。話が弾んで、昔のこと、記憶の中にあることをどんどん思い出すことは、頭を活性化させることになり、認知症予防にもなると言われている。俺はただ喜んでくれると思ってやっていたけど、そんな効果もあるんだな。

「アラグロ」じいさんの言いたいこと

 伝えたいのは、人と人とが顔を見ながら話すことの大切さ。オレね、携帯電話を持っていないんだよ。アナログじいさんだよ。この前、間違ってアラグロなんて言っちゃったけど(笑)。デジタルとかAI(人工知能)にあまり頼っていないんだよ。メールじゃなくて手紙。うちのかみさんにも1か月に1度くらい、 葉書(はがき) を出しているんだ。ちゃんとポストに入れるんだよ。

 ほら、メールだからけんかになったり、メールだから伝わらないっていうこともあるじゃないですか。メールは便利だけど、俺はできれば会って話をする、顔を見るようにする。顔を見れば争いもなくなるんじゃないかなって思うんだ。そして、今生きている年寄りが楽しく、あー生きててよかったな。令和の時代に生き残ってよかったな、と思えるような毎日にしていくことが大切だろう。これからも「くたばりぞこないのジジイ、ババア、元気かい」とか言い続けるよ。これも顔を合わせないとできないショック療法だよな、一種の……。

 次回は毒蝮さんが自らの人生を回想します。

 ※「よみうり回想サロン」など回想に関する情報は、健康サイト「ヨミドクタープラス」で。

毒蝮 三太夫:(どくまむし・さんだゆう) 本名・石井伊吉。1936年(昭和11年)、東京出身。48年、舞台「鐘の鳴る丘」でデビュー。日大芸術学部卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」など数多くの映画、テレビに出演。聖徳大学客員教授。近著に「ババァ川柳 人生いろいろ編」「シルバー川柳日めくり」(いずれも河出書房新社)。

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