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鶴若麻理「看護師のノートから~倫理の扉をひらく」

コラム

がんで余命2か月の38歳女性 夫に「本人には伝えないで」と頼まれたが…

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(2)患者は余命について何も感じとっていないのか

 

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 がんが再発したと聞いたら、皆さんはどのように感じるでしょうか? 平静ではいられないかもしれません。自分の命の長さについても、意識せざるをえないと思います。

 この患者に関しても、「自分の余命がそう長くはないことを、まったく感じ取っていないなんて、そもそもあり得るのだろうか」と議論になりました。自分の病名や再発については、医師から説明されており、身体の状態が悪くなりつつあるのも身をもって感じていることでしょう。「余命を伝えなければ、患者は何も感じとっていない」という前提は、疑う必要があります。

(3)余命を伝えた方がよりよい時間を過ごせるに違いないのか

 

 看護師は、「余命を伝えることで、子どもや家族と有意義な時間を過ごすことができた」という例をいくつも経験していたため、「伝えた方が患者にとってより良いに違いない」と思い込んでいるのではないか、という指摘もありました。

 たとえ長く入院している患者であっても、看護師がすべての行動を知っているわけではありません。このケースでも、患者なりに子どもとの過ごし方を考え、意識して「大切な時間」を生きていたのかもしれません。看護師は、余命を知らないで過ごすのは患者にとって不利益だと考えていますが、大事なのは、限りある時間を、その人らしく過ごすことです。また、不確実である余命を伝えることが、患者や家族に与える影響も十分考慮しなくてはなりません。

(4)何のために余命を伝えるのか

 

 最後に、授業では、「余命を伝えるか、伝えないか、という二者択一で物事を考えがちであることも、大きな問題ではないか」という話になりました。

 大事なのは、伝えるか否かではなく、患者が自分らしく生きることを支援すること、つまり、患者の希望を最期まで大切にし、患者のQOL(生活の質)の向上を目指すことです。予測される身体症状、抗がん剤治療の中止、緩和ケアの希望、最期はどこで迎えたいのかなど、終末期にかかわる話し合いを進める中で、「余命の伝え方」も検討されるべきでしょう。(鶴若麻理 聖路加国際大准教授)

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鶴若麻理(つるわか・まり)

 聖路加国際大准教授(生命倫理分野)、同大公衆衛生大学院兼任准教授。
 早稲田大人間科学部卒業、同大学院博士課程修了後、同大人間総合研究センター助手、聖路加国際大助教を経て、現職。生命倫理の分野から本人の意向を尊重した保健、医療の選択や決定を実現するための支援や仕組みについて、臨床の人々と協働しながら研究・教育に携わっている。2020年度、聖路加国際大学大学院生命倫理学・看護倫理学コース(修士・博士課程)を開講予定(認可申請中)。編著書に「看護師の倫理調整力 専門看護師の実践に学ぶ」(日本看護協会出版会)、「臨床のジレンマ30事例を解決に導く 看護管理と倫理の考えかた」(学研メディカル秀潤社)、「ナラティヴでみる看護倫理」(南江堂)がある。

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1件 のコメント

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個人の集団の為の真実と自由の取り扱い規約

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

関係なさそうで、医大サッカー部の指導と似ているなあと思いました。 色んな選手の性格も理解や感情はバラバラですし、日々揺れ動きます。 僕は選手目線...

関係なさそうで、医大サッカー部の指導と似ているなあと思いました。
色んな選手の性格も理解や感情はバラバラですし、日々揺れ動きます。

僕は選手目線で練習に入りながら、修正を加えていきつつ、教科書も買って与えていきます。
これに対する個々の選手の反応も様々です。
やってこないとわかっていても敢えて説明して、失敗やサボりを可視化することもあります。
後で理解し、ポジティブに行動させるためです。

20歳前後ですから、言われてすぐに頑張る子もいれば、とりつくろったり、無視したり、強がったり、嘘を吐いたり、逆らったり、様々ですし、スコア自体は敵も未熟なので勝つこともありますが、その子自身の成長だけは真実です。
一方で、かりそめの勝利が気持ちを高揚させ努力させることもあります。

そこで、本文にも繋がりますが、真実が必ずしも個々人を幸福にするわけではありませんし、責任問題も絡む中で、あまり関わらない方が楽なのですが、一生懸命やる子や僕と付き合いの長い子は、そういう細かすぎて伝わらない部分まで理解してくれますし、たまにそういう望外の喜びが欲しければ、日々の不満や怒りなど多少は我慢しないといけないかなとも思います。

完全に仕事になると、そういうスタンスは難しいですよね?
評価する人の好き嫌いで、機会平等と結果平等のバランスを過度に悪意で取られれば、バカバカしいことになります。
しかし、どこまでもビジネスにすると、そういう人間的なケアにおいて及び腰になってしまいます。
夫の為に真実を伝えないのか、本人の為に真実を伝えるのかも、結局は答えのない問題です。
がんの告知がなかなか一般的にならなかったのも、そういう責任問題ゆえの無責任社会と言質社会の中で、科学的にも心情的にも複雑な話が避けられてきた部分があるのではないかと思います。

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