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本田秀夫「子どものココロ」

医療・健康・介護のコラム

うつ、ひきこもり、職場になじめず…「いじめの後遺症」は成人後まで続くことも

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人格形成に影を落とす

 激しいいじめや長引くいじめは、被害を受けた子どもの人格形成に大きな影を落とすことがあります。長期にわたって精神的変調をきたすこともあります。

 まず、人と関わることに対する強い恐怖や不安が表れ、それが続きます。とくに、同世代の人たちと接することに強い恐怖を覚えるため、いじめが解消したり進学して異なる人間関係に入っていったりした後でも、集団になじめず疎外感を持ち続けることがあります。

 対人関係がうまくいかないために自信や自己肯定感が低下し、うつ病を発症することもあります。自分の存在をとるに足らないものと考えて、「生きていてもしょうがない」と自殺を試みる子どももおり、メディアでもときどき報道されます。

 いじめで学校に行けなくなり、そのまま成人期のひきこもりへと移行するケースもあります。就職しても、職場になじめずに仕事を転々とすることが少なくありません。

加害者への治療が必要なことも

 こうした「いじめの後遺症」への対応は、被害を受けた子ども本人はもちろん、家庭や学校にも必要です。

 本人に対しては、自信と自己肯定感の回復を促し、うつや対人関係への恐怖・不安を軽減する治療が必要となります。家庭や学校に対しては、「いじめられる側にも問題がある」という態度を絶対に示さないこと、本人がつらいと感じている事実を重く見て、 真摯(しんし) に対応することを求めます。

 いじめた子どもにも、精神医学的な対応が必要となることがあります。加害者の中には、自分自身も過去に誰かから心理的・身体的な攻撃を受け、そのはけ口として別の誰かを攻撃してしまう子どももいます。自分がいじめられるのを避けるために、いじめる側についている場合もあります。いじめているつもりはなかったのに、相手から「いじめられた」と言われて戸惑っている場合もあります。

 いずれの場合も、当初は「いじめられた側にも問題があった」という理屈で、自分を正当化することがしばしばあります。自分のとった行動によって、相手が心の傷を負ったという事実を直視させ、場合によっては、いじめた子ども自身の心の傷に対し、治療を行う必要があります。(本田秀夫 精神科医)

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本田秀夫(ほんだ・ひでお)

 1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授。同学部付属病院子どものこころ診療部長。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。

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1件 のコメント

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個と組織の構造問題と内在論理を読み解く

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

人間性とかいう言葉もかすむくらい、人間社会の本質は原始的な部分があります。 羅生門ではありませんが、生活基盤をきっちり築き上げた人間のごく一部だ...

人間性とかいう言葉もかすむくらい、人間社会の本質は原始的な部分があります。
羅生門ではありませんが、生活基盤をきっちり築き上げた人間のごく一部だけがいつも優しくあれるような気もします。

いじめとは、小学校で習う、にわとりのつつきの順位が人間や社会の複雑性に沿って表現されたものです。
エスカレートすると自分を襲うとわかっていても、習慣性や共依存のため、なかなか抜けません。
医療社会もパワハラアカハラなどで、自殺や精神症状、精神疾患が後を絶ちませんね。
そういうものは、むしろ、目の前の事象を見るよりも、良い小説や映画などで、対比構造を学ぶ方が有効な気もします。
そして、そういう構造から距離を置くのもいいでしょうし、その状況下で生き抜く手段について考える必要があります。
親や社会機構の助けは大きいですが、自分の人生の責任は自分でしか取れません。

人手が足りないと呼ばれる職場がなぜ人手が足りないのかも一緒ですよね。
一部の人の意見や気分が過度に反映されるのであれば、同じ理不尽でもメリットの大きい組織に優秀な人材は流れます。
逆に、人間社会の持つ理不尽さから距離を置くために、内向的に、あるいは虚構の作品や社会に楽しい時間を求めるのも悪くないでしょう。

今度、医療業界で色目で見られがちな美容のバイトをしてみることにしてみました。
稼がなくては画像診断の勉強も続けていけませんし、薄毛の先生の何人かにひどいことを言われたので、その悩みや闇を研究してみたいと思います。

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