がんを語る
医療・健康・介護のコラム
白血病(下)退院後に気分の落ち込み、パニック障害……「ひとりぼっちじゃないよ」患者同士で支え合い
患者会に参加した理由は?
――みなさん、それぞれ患者会活動にも参加されていらっしゃいますね。

新井 (写真) 東大病院に入院していた時から、「ももの木」というNPOのおしゃべり会に関心があったんですけど、入院中は体調に波があってなかなか参加することができませんでした。退院して約半年後に初めて、新宿の居酒屋で開かれた会合に出席しました。血液がんの患者が30人くらい参加し、居酒屋の2階は満杯という感じで「スゲー」と思いました。
もともと骨髄移植を受ける前に、病院の廊下で患者に話しかけられたのに力づけられたのが、患者同士のおしゃべりに関心を持ったきっかけです。できれば外の居酒屋よりも、病院の中でやれればいいだろうという思いもありました。そこで退院から3年後の2006年に、東大病院で始めたのが、おしゃべり会「パロス」。ラテン語で灯台という意味で、「とうだい(東大)」と、「荒波を越える患者さん方への道しるべになるように」という思いを込めました。
島村 「患者スピーカーバンク」に参加したのは、ほかの患者さんはどういう思いで退院後の生活を送っているのかを知りたかったからです。白血病がどうだというのではなく、たまたま「患者」という文字が入っていた会を新聞でみつけて。実は、入院して治療をしていた時よりも、退院した後の方が気分の落ち込みがひどかったんです。心も体も疲れ切ったというか。何にもしたくないし、退院することができて今が一番うれしいはずなのに、そのうれしさや楽しさはなく、何をすると自分が楽しいと感じていたかもわからなくなっていました。自分勝手だと重々自覚もしていましたが、「病気をしていた方が楽」くらいの気持ちで、自分がそんなことを思うこと自体が意外で罪悪感もありました。
患者スピーカーバンクでは、2か月に1回くらい、患者の立場にある人が自分の経験を講演という形で伝えることができるように、その講演の作り方、伝え方を学ぶための研修を開催していて、私はその講師を担当させていただいています。主に製薬企業の社内研修、医学部、看護学部の授業などで、闘病体験をお話しさせていただくことが多いです。患者スピーカーバンクの会員の方には病気、障害、人生背景も様々な方がいらっしゃり、その思いに触れ、勉強させていただくことばかりです。
小林 私はいくつもの会に顔を出しているんですが、それぞれに意味があって、ひとつは、島村さんと同じように自分のマイナスの気持ちを回復させたい、というのがあります。もうひとつは、自分の経験を他の患者さんの役に立ててほしいという、プラスの意味もあります。
また、白血病なら白血病という同じ患者の集まりに参加すれば、病気の情報が得られるというメリットがあります。病気の種類を超えて同年代の患者が集まる会に参加すれば、横のつながりができます。
病気経験はスキル。先輩患者として役に立ちたい
――スタッフを務めているキャンネットとは?
小林 キャンネットの代表に言われたのは、病気の経験は患者にとってのスキルだということです。これから病気になる人の「先輩」として力になれるという思いに共鳴して、スタッフとして参加するようになりました。会にはそれぞれ意味があって、同じ白血病患者さんが集まる「ももの木」に行くと、何を言っても分かり合えるという、安心感がすごい。また、違う病気の患者さんの会にいくと、また刺激をもらえます。
患者会でしゃべったり、小学校の「命の授業」で話をしたり。小学生に話すのって意外と難しいですけど、何とか良い内容を伝えたいですし、やりがいがあります。自分の経験を生かしたいという思いは強いです。
新井 当時は患者にとっての情報が少なかったので、会の存在は今よりもっと貴重でした。ただ、患者会というと圧力団体ととらえられる向きも当時はまだあって、患者会っていいものだよということを普及させる意味で2006年に、各病院の会の代表らによる院内患者会世話人連絡協議会をつくりました。今では血液がんだけでなく乳がんなども含め、20病院くらいの患者会が集まって年2回の総会を開いています。
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