デイサービスが舞台のミュージカルをプロデュース…中尾ミエさん
インタビューズ
平均年齢76歳のロックバンドは「理想のデイサービス」だった!?…歌手・中尾ミエさん
政治家や役人にも見てほしい
――その一方で、高齢者が活気を取り戻すにつれて、疲れて意欲を失っていた介護職員たちもいきいきとしてくるのが印象的でした。
介護される側が楽しく過ごすには、まずは介護する側が楽しくなくては……というのが、私の持論なんです。介護のことを語るとき、つい高齢者の方にばかり目が行ってしまうようで、「介護する側が、どう楽しむか」については、あまり話題になりませんが。デイサービスだって、もっと自由にいろいろなことに挑戦してみたらいいと思うんですよ。
政治家や厚生労働省の役人にも、このミュージカルを見て、考えてもらえたらいいですね。
――中尾さんが、高齢化や介護の問題にこれほど関心を持っているとは、実のところ予想外でした。
私もあなたも、誰もが「老い」に向かって歩んでいるのだから、人ごとではないんです。年を取っても人生を楽しく過ごすには何が必要かを考えて、ないものは自分で作るくらいの心構えでいないと。ただ待っているだけで、自分に都合のよい方に世の中が動いていくわけがないんだから。私は、今後の参考にしたいと思って、高齢者や障害者に関わる各地の取り組みで「いい」とか「面白い」なんて評判を聞くと、見学に行ってるんですよ。
役割があることが幸せ
――そうした経験を踏まえて、どんな高齢期を過ごしたいと考えていますか?
富裕層向けのいわゆる「高級老人ホーム」では、ミュージシャンを招いてコンサートを開いたりするので、私もそういう場で歌うことがあります。建物はステキだし、サービスは至れり尽くせりなのですが、「果たしてこれが幸せなのかな」と感じます。演奏中に「どうぞ踊って下さい」と入居者に声をかけると、どの人もすっと立ち上がって、慣れた感じでステップを踏むのには「さすがだな」と思いましたけど。
それよりも、みんなでドングリを拾ってきて、皮をむきながらおしゃべりしてる地方のお年寄りの方が、ずっと楽しそうに見えるんですよね。
93歳で亡くなった父は、割と最後の方まで身の回りのことは自分でできていたのですが、趣味のない人で、仕事をやめてからは時間を持て余しているようなところがありました。それを見ていたので、「しんどい」とか「大変だ」とか文句を言いながらでも、毎日やることがあるのが幸せなんじゃないかと思ってるんです。それで人の役に立てるなら、最高ですよね。
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オリジナルミュージカル「ザ・デイサービス・ショウ2019~It’s Only Rock’n Roll」は、2019年10月5日に志木市民会館パルシティ(埼玉県)でスタート。全国16か所で上演される。
なかお・みえ 1946年、福岡県生まれ。歌手、女優。16歳の時、デビュー曲「可愛いベイビー」が大ヒットし、一躍スターに。歌手の伊東ゆかり、園まりと「スパーク3人娘」を結成し、お茶の間の人気を集めた。舞台や映画、ドラマ、バラエティーなど、幅広く活躍。2019年公演のミュージカル「ピピン」では、73歳にして空中ブランコのアクロバットを披露し、話題になった。
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