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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

皮膚のピリピリと水疱…3人に1人がかかる帯状疱疹 激烈な神経痛防ぐには「発症後5日以内」に治療を

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 総務省による統計では、現在、65歳以上の方が総人口の28%を占めている。この人口の高齢化に伴って増加している病気のひとつに「帯状 疱疹(ほうしん) 」(ヘルペス)がある。生涯を通じて3人に1人、日本人が平均寿命まで生きるとすると約半数の方で発症、と考えられているのだ。現在、わが国での1年間の新患者数は実に60万人!に達する。

 人類と帯状疱疹とのつき合いは古く、紀元前にさかのぼる。しかし、どのようにして発症するのかがわかったのは比較的新しく、1892年、小児期に感染した「水痘」(水ぼうそう)との関連性がわかり、1965年には、水痘ウイルスの「回帰発症」によって発症することが確認されている。回帰発症とは、以前に体内に入り込んだウイルスが再び暴れ出す(再活性化)ことをいう。水痘が治った後に、ウイルスが神経節( 末梢(まっしょう) 神経の神経細胞が集まった部分)に潜伏し、それが再活性化して増殖するのである。増殖したウイルスは、末梢神経を傷つけながら進み、その末梢神経が枝を出す皮膚に水疱(水ぶくれ)を作り出す。ヘルペスという呼び名はギリシャ語のherpein( () う)に由来するが、まさに末梢神経を這って進むのだ。

10代と50歳以降に多い

 発症しやすいのは、10歳代と50歳以降(70歳代がピ-ク)。後者では、最も大きな要因は加齢であり、女性に多い。免疫機能に何らかの異常がある場合、免疫抑制剤を使用している場合にも多くみられる。季節的には、夏に多く、冬から春にかけては少ないとするデータも示されている。

 体中のどこにでも起こるが、 三叉(さんさ) 神経第1枝(おでこ)、第2~4 肋間(ろっかん) 神経(肋骨の下を走り、胸から背中の皮膚の感覚を伝える)が枝を出しているところが多い。99%以上が片側性であるが、まれに両側性やかけ離れた部位にみられたり、全身に散在(「汎発性帯状疱疹」と呼ばれ、脳炎や髄膜炎を合併することがある)したりすることもある。

湿布かぶれだと思ったら

 「胸の湿布かぶれが治らなくて、痛みがさらに強くなってきたんです」と、Yさん(70歳代、女性)が診察室に駆け込んできた。診ると、湿布かぶれではなく帯状疱疹である。

 帯状疱疹の場合、通常は、皮膚の違和感に引き続いて、「ピリピリとした」痛みを自覚、3~4日後には水疱が出現する。Yさんのように、痛みの原因が分らないまま湿布を貼り、湿布かぶれと思い込んで発見が遅れることが多い。水疱は小豆大以下で、中央にくぼみがあり、約3~4週間もすれば、かさぶたになって治癒するが、その後、性質の異なる激烈な痛みを生じることがある。これが「帯状疱疹後神経痛」である。

 そのため、治療のポイントは、「いかにして帯状疱疹後神経痛の発生を予防するか」にある。ペインクリニックでは、さまざまな「神経ブロック療法」を行っている。障害を受けた神経の根っこに局所麻酔薬を注入して、痛みの伝達を遮断するのである。その他、抗ウイルス薬(ゾビラックスやバルトレックス)の投与が広く行われているが、発症後5日以内に治療を開始しないと神経痛の予防には結びつかない。ガバペンチノイド(リリカ、タリージェ)が帯状疱疹後神経痛の治療に用いられているが、私見では、神経痛が出る前、帯状疱疹を発症した早期から服用したほうが、より効果的だと思われる(保険適応外ではあるが)。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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