文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

介護・シニア

もう在宅は無理? 分かっていても揺れる心…父さんの施設入所(1)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

漫画・日野あかね

母さんも介護が必要に

 父さんが脳出血で倒れてから21年となった今年の夏、岡崎家では、介護における新たな壁にぶち当たりました。それは「在宅介護の限界」です。

 これまで父さんをメインで介護していた母さんが倒れてしまい、自身も介護が必要な状態になってしまいました。

 卵巣がんと闘いながら、持ち前の明るさで父さんの介護を乗り切ってきた母さんも、もう若くはありません。無理に無理を重ねた体が、とうとう悲鳴を上げたようです。

 母さんが、がんの手術のために入院したときも、介護のプロやご近所さんなど周りの力を借りながら、なんとか家で父さんを介護しました。ですが、あれから十数年が過ぎ、父さんの認知症も進行し、介護が必要なことが増えています。私も結婚して、近くといえども両親と別に暮らし、まだ幼い息子を育てています。私たちを取り巻く状況は、21年で大きく変わっていたのでした。

施設入所、父さんはOKしたけれど…

 自分の家庭という、守らなければならない存在を得た私は、少し前から「在宅で父さんの介護を続けることは、もう厳しい」と考えるようになっていました。

 私のそんな気持ちをくんでくれたケアマネジャーは、折を見ては、母さんにさりげなく特別養護老人ホームの入所申込書を渡すなど「施設入所」の話を持ち掛けてくれていました。

 施設に入るのは父さんですから、父さんにも相談をしなくてはいけません。「母さんが家で父さんを介護するのは限界かもしれない。施設で介護を受けてもらってもいい? もちろんできる限り面会にいくし、時々は、おうちに戻って何日か一緒に過ごすこともできるからね」と、私の正直な気持ちを話しました。

 しばらく下を向いて考えていた父さんの姿に胸が押しつぶされそうになりましたが「うん……」と、返事をしてくれました。きっと父さんなりに、私たちの状況を思ってくれたのではないでしょうか。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

column_aruaru-500no

認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

hino-117-fin

日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 23歳で少女漫画誌でデビュー。現在は、生まれ育った北海道で夫と暮らす。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、つらい治療を乗り越えて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載中。

認知症介護あるある~岡崎家の場合~の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事