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街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー

医療・健康・介護のコラム

大雨、台風…相次ぐ災害 「車いす」「聴覚、視覚障害」自力で避難できない人をどう助ければいい?

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 ヨミドクターをご覧のみなさま。サービス介助士インストラクターの冨樫正義です。近年、地球環境の変異により地震や台風、大雨などの自然災害が多発しています。今月は台風15号が各地に被害をもたらしました。交通機関が止まったことにより移動が困難になり、停電と猛暑が重なって体調不良にみまわれた方も続出しました。

 災害は今後も訪れます。高齢化率が28%を超えた日本では、とくに、高齢者や障害のある人の避難が課題となっています。

一般よりも早めの避難が必要

 1995年の阪神・淡路大震災では、亡くなった人の半数以上が60歳以上でした。2004年の新潟県中越地震では、過疎化・高齢化した地域が孤立しました。そして11年の東日本大震災では、被災地全体の死者数の約6割が65歳以上の高齢者で、障害のある人の死亡率は、被災住民全体の死亡率の約2倍に及びました。

 このことから、13年に災害対策基本法が改正され、災害が発生し、または災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難で、特に支援を要する人を「避難行動要支援者」とし、行政による要支援者名簿作成などの規定が設けられました。そして、災害時、避難行動要支援者と援助する人など移動が困難な人に対し、行政が、避難勧告より前の段階で「避難準備・高齢者等避難開始」を発令することになりました。一般の人よりも避難に時間がかかるため、早めの支援が必要になるのです。

車いすを持ち上げて階段昇降 4人以上が基本

階段を下りる場合、車いすは後ろ向きが基本です。階段を上る場合、前向きが基本です

 では、実際に高齢者や障害のある人を手助けするときには、どんな配慮が必要なのでしょうか。

 まず、下肢(脚)に障害がある人の場合からご説明します。

 「足腰が弱くなり長い距離を歩けない」「股関節に障害がある」「片まひがある」など、下肢の障害といっても様々であり、その人によって、避難時に必要となる補助具も、つえや歩行器、車いすなど様々です。したがって、その人の状態と災害の状況に応じて、「手をつなぐ」「腕につかまってもらう」「車いすを押す」など介助方法も異なります。

 車いすで移動する際、エレベーターが止まっているなど、階段を使用しなければならない場合は、基本的には4人以上で車いすを持ち上げて昇降します。その際、車いす本体に溶接された部分(折れ曲がったり、動いたりしない部分)を持ち、車いすの向きは、階段を上る場合は前向き、下りる場合は後ろ向きが基本です。車いすなどが使えない場合は、背負うなどして避難します。

 不特定多数の人が利用する施設や公共スペースでは、移動の動線が確保されているかも確認しましょう。

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街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー

冨樫 正義(とがし・まさよし)

冨樫 正義(とがし・まさよし)
 1973年、埼玉県生まれ。桜美林大学大学院卒(老年学研究科修士号)。東洋大学国際観光学部非常勤講師。法律事務所、不動産関係会社、人事コンサルタント、専門学校講師を経て、現在、サービス介助士、防災介助士、認知症介助士などを認定・運営する団体「公益財団法人日本ケアフィット共育機構」(0120‐0610‐64)のインストラクターとして、年間50社以上の企業対象研修を担当するほか、企業のバリアフリー・ユニバーサルデザインのコンサルティングも行う。

平野 恵(ひらの・めぐみ)

平野 恵(ひらの・めぐみ)
 視覚障害と軽度の移動機能障害がある。2歳から4歳まで盲学校幼稚部、その後、小学校から高校まで養護学校(現在の特別支援学校)に通い、高校まで車いすを使用して生活をしていたが、大学入学後の訓練を経て、現在では白杖のみで歩行している。日本ケアフィット共育機構事務局に勤務。サービス介助士アドバイザー。

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