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毒蝮流回想のススメ…毒蝮三太夫さん

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毒蝮流回想のススメ(上)~「昨日何食った?」「ヒジキ食った」「それは海藻」 

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昔のニュース写真をバックにポーズをとる毒蝮さん(小林武仁撮影)

昔のニュース写真をバックにポーズをとる毒蝮さん(小林武仁撮影)

 半世紀以上続くラジオの生中継で「ジジイ、ババア、元気か」と独特な愛情表現で知られる毒蝮三太夫さん(83)。お年寄りに「病院に行くよりマムシさんと話すほうが元気になる」と言われたこともある「元気配達人」だ。高齢者と上手にコミュニケーションをとるコツは、昔の出来事を糸口に思い出を語り合う回想にあるという。そんな毒蝮さんに、回想の楽しさや効能について語ってもらった。

年寄りからずいぶん学ばせてもらった

 ――回想に関心を持ったきっかけは何だったんでしょう?

 昭和44年から、TBSラジオ「ミュージックプレゼント」のパーソナリティーとして、中継車であちこち行った。放送は平日の午前中だったから、中継現場はババアが多かったわけだ。当時は30代だったから、親のような70代、80代の人と毎回やり取りした。

 目を輝かせながら話してくれたのは、昔の映画スターや歌手、スポーツ選手の思い出。俺の知らないことをずいぶんと教えてくれた。それがいまも、俺の中に知識として残っている。年寄りも話を聞いてもらえると楽しいし、聞いている自分も学習させてもらっているから幸せだった。

 最近になって、高齢者が昔の思い出や自分の人生について語り合うことを回想法といい、脳のトレーニングにつながり、認知症の予防にもなるといわれていることを知った。ああ、俺がやってきたのも回想法だったのかな、と思ったわけ。

 回想法:1960年代に米国で始まった心理療法。高齢者が、昔の懐かしい写真や生活の道具などを見たり、触れたりしながら、昔の思い出や自分の人生について語り合うことで、脳のトレーニングにつながり、認知症の予防や進行の抑制が期待できると言われている。

「ババア」と言われて元気になった

 俺のラジオに出てくれた人で、亡くなった人はゴマンといますよ。だけど、その人たちが、医者に行くよりも、薬を飲むよりもマムシさんと会って話をしたほうがいい、「ババア」と言われて元気になった、と言ってくれたんだ。驚くよね。

 年寄りと話すことが多い番組を50年やっている間に、年寄りはこういうことを言ったら喜ぶとか、嫌がるとか、怒るとか、泣くとか、感動するとか、ということを学んだんだな。習わぬ経を覚えた門前の小僧のように。

 いつのまにか「年寄りの専門家」みたいに言われて、大学で福祉を教えてくれとか、講演会で年寄りを元気にさせてやってくれとか、言われるようになっちゃった。回想法を知っていてやったわけではないんだ。

一番近いところから思い出そう

 ――どんなふうに回想法を進めたらよいのでしょうか?

 80代、90代の人がTPP(環太平洋経済連携協定)やG7(先進7か国)の会議、日本の貿易について聞かれたって、答えられるわけないわな。でも戦時中、空襲にどこであったとか、家族で戦地に行った人はいたか、玉音放送をどこで聞いたかって聞けば、たいがいの年寄りは話せるよ。体験したことを話してもらうんだ。

 自分に一番近いところを思い出すことから始めるんだ。小学校に何年に入ったとか、そのときどういう先生がいたとか、どういう友達がいたとか。お父さん、おじいちゃん、3代、4代前までの名前を思い出していくのもいい。

 「昨日何食った?」というのも回想法。たとえばヒジキを食った。これも回想(=海藻)(笑)。「一昨日の食事は何だったっけ?」なんて、意外に思い出せないもんですよ。昔見た映画のタイトルや俳優の名前、電車の路線の駅名など、自分が好きなところでいろんなことを思い出してみるのもいい。考えていくと楽しいんだよ。

回想は言葉のキャッチボール、金もかからない

 盟友の落語家で、亡くなっちまった立川談志なんて、映画が大好きだから、60年以上前に会った頃から、「Gで始まる俳優をあげてみよう」とかいって、俳優の名前から映画のタイトル、役どころなんかを二人で思い出しながらあげていたね。これも一種の回想だね。

 戦争のことや、戦後の物不足のときにどうしていたとかいう話題は、80代、90代にとって共通の話題。いま独居老人が多いっていうけど、一日しゃべらないとか友達が来ないっていう人もいる。そういう人に共通の話題でしゃべる機会を持ってもらうのは大事なこと。それを自分もやってきた。

 回想って、金がかからねえんだよ。ある意味じゃ、言葉のキャッチボールだから。楽しいし、一銭もかからないし。知らなかったら知らないでいいわけだからな。

 俺は下町のうまれ。親父は大工、江戸っ子のおふくろ。子供の頃から、近所付き合いが盛んで、しゃべらない日はなかったから。そのときの延長で、俺は今でも年寄りに会ったとき、「よう元気か」とか、初めて会った人にも「久しぶりだな」とわざと言うんだ。「初めて会った」と言い返されることも多いけど、話の接ぎ穂になるじゃないか。

 ※「よみうり回想サロン」など回想に関する情報は、健康サイト「 ヨミドクタープラス 」で。

 毒蝮 三太夫:(どくまむし・さんだゆう) 本名・石井伊吉。1936年(昭和11年)、東京出身。48年、舞台「鐘の鳴る丘」でデビュー。日大芸術学部卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」など数多くの映画、テレビに出演。聖徳大学客員教授。近著に「ババァ川柳 人生いろいろ編」「シルバー川柳日めくり」(いずれも河出書房新社)。

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