文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

医療・健康・介護のコラム

子どもの入浴時間に合わせて帰る若手、中高年社員との世代間ギャップ、どうする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

若手が増えて職場の空気が変わった、と課長

私 : 「高ストレス状態」ですね。自覚症状がかなり出ていますよ。

課長: そうでしょうね。職場で若手とベテラン社員がうまくいっていません。

私 : そうですか。

課長: わが社では多忙時は、社員全体で当たるのが普通でしたから。

私 : そうですね。 

課長: 突然と言いますか、若手社員が増えた去年ぐらいからガラッと雰囲気が変わりました。まだ仕事が残っているのに、若手の社員は早く帰ってしまうんですよ。エッという感じ。

私 : なるほど。

課長: カルチャーショックですよ。時代は変わったと思いましたよ。

私 : なるほどね。

課長: これも時代ですかね。

仕事を残したまま帰る若手

課長: 若手に残ってほしいと言っても、子どもをお風呂に入れる時間に間に合わなくなるからと、さっさと帰ってしまうんです。

私 : う~ん。

課長: 残ったベテラン社員はどうなるんだと、初めはあきれていたんですが、しだいに怒りが湧いてきました。

私 : 怒った?

課長: と言うよりは、あきれた。でも、何度もあると不満が出てきますよ。 

私 : それがストレスですね。

課長: そうです。時期を待てない業務は若手社員にも「業務命令」で残業としてやってもらっています。それ以外の場合、解決策が見つからないですよ。若手と話したいと思って、飲みに誘ったのですが、「家事をしなければならないので」と断られた。これもショックで。

世代間の溝は深い

私 : ショックですね。

課長: 何とか飲みに行けた若手2人と話をしましたよ。

私 : どうでしたか?

課長: それとなく、「仕事だからと。ベテランも残ってしているので協力してよと。それが社風ですよ」と言ったんですよ。

私 : それで。

課長: 彼らは「そんなお説教をされても、今どき会社中心の考えには無理がある。ベテラン社員の奥さんは専業主婦。我々は全員、共働きで、妻も正社員ですから」と主張しますね。

私 : 割り切っていますね、若手は。会社、仕事が第一ではないですね。

課長: そうです。課内で私は浮いているのかなぁ。

私 : 浮いてなくても、ピンチはピンチですね。

世代間の問題は増えている

 若手とベテラン社員との仕事に対する価値観やライフスタイルの相違が浮き彫りになった事例です。課長は、両者の調整で悩んでいます。

 このような職場内葛藤は増加の一途です。背景にあるのは女性の本格的な職場進出です。この15年くらい顕著です。事例のように専業主婦の妻がいる中高年社員と、正社員などで働く妻を持つ若手では、ライフスタイルも価値観も違います。

 専業主婦なら家事や子育てなどは本業で、夫は働くのが中心と、役割分担があります。一方、共働きの場合は、家事も育児も、2人でするのが普通になっています。

 この世代間ギャップが表面化するのは、業務多忙時やトラブルが生じた時です。それが大事な業務なら、上司の業務命令で対応できますが日常となると問題が生じますね。

夫婦2人の話し合いで乗り越えていく

 本当は職場全体の働き方が、共働きでの家事や育児を前提にした形になればいいわけですが、今はまだ、会社では旧来の働き方やライフスタイルの違う世代が共存しています。その中で現実的に対応していくには、基本は夫婦二人の話し合いしかないようですね。状況に応じて、2人にとって何が大切か、優先順位を検討し、どのように家事・育児を分担していくか考えていくことになるでしょう。

子供の入浴時間に合わせて帰る若手、中高年社員との世代間ギャップ、どうする

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)

 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会元理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」ウェブ書籍「メンタル・キーワード療法~5分でできる簡易セラピー」。
夏目誠の公式ホームページ」「精神科医マコマコちゃんねる - YouTube

産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」の一覧を見る

6件 のコメント

コメントを書く

会社が解決すべき問題で家庭の問題ではない

かてい

現実的に対応していくには、と前置きはあるものの「基本は夫婦二人の話し合いしかないようですね」という結論には違和感しかありません。ベテラン社員側に...

現実的に対応していくには、と前置きはあるものの「基本は夫婦二人の話し合いしかないようですね」という結論には違和感しかありません。ベテラン社員側には非がなく、若手社員の家庭内で解決すべき問題と捉えているようにも読めます。会社全体で働き方を変えていかなければならないという大きな流れの中、旧来の働き方を是とするベテラン社員側の意識を変える、残業しないと仕事が回らないのなら人員を増やす、といったことを会社がやるべきで、育児などの事情がある社員の家庭がしわ寄せを受けるべきではありません。

つづきを読む

違反報告

残業は拒否してもよいのでは?

家庭の復権

残業を前提とした職場風土を容認する夏目先生の姿勢に違和感があります。女性の社会進出で家事労働力が減少した分、男性の家事労働シフトは避けられません...

残業を前提とした職場風土を容認する夏目先生の姿勢に違和感があります。女性の社会進出で家事労働力が減少した分、男性の家事労働シフトは避けられません。そのような情勢を踏まえ、産業医は、会社に対し、仕事が定時で回る事業運営を行うよう働きかけることが大事だと思います。労働基準法は、労働時間を原則として1日8時間、週40時間までと定めているはずです。家庭から家事労働力を引き抜いて女性の雇用を進めているにもかかわらず、残業に依存せざるをえない会社自体が、産業医の是正勧告の対象ではないでしょうか。

つづきを読む

違反報告

転職も視野に入れるべきでは

プリプリ虫

夫婦2人ともキャリアも大切にしたい、だが根底は子ども優先、ということであれば、時代により環境に変化を求めることは必須。転職を視野に入れることも考...

夫婦2人ともキャリアも大切にしたい、だが根底は子ども優先、ということであれば、時代により環境に変化を求めることは必須。転職を視野に入れることも考えてよいのでは。リモートワークが難しい仕事であれば、帰れる方が帰る、2人とも重なるなら送迎をシッターさんに頼むなど、夫婦間のコミュニケーションを徹底するしかない。会社にいることを重視する会社に夫婦とも勤めているのはつらい。そして、そんな会社は若手が離職し、きっと衰退するだろう。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事