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産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

医療・健康・介護のコラム

子どもの入浴時間に合わせて帰る若手、中高年社員との世代間ギャップ、どうする

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 31歳の中川和男さん(仮称)は社内で実施されたストレスチェックを受検。初めて「高ストレス」と判断され、悩みと興味もあったので産業医面談に訪れました。また、彼は知らなかったのですが直属上司の課長も「高ストレス」で、若手社員の気持ちを知りたいと考え、面談を希望しています。私と中川さんの面談から紹介します。

仕事と家庭の両立に悩む若手

イラスト 奥山裕美

イラスト 奥山裕美

私   : よく、相談に来てくれましたね。産業医の夏目です。ここで話した内容は守秘義務で守られますから、安心して話してくださいね。ストレスが高いですね? 仕事ですか、家庭ですか?

中川さん: 両方です。会社と家庭の両立です。

私   : それで。

中川さん: 今、会社が多忙な時期で、私たち若手は毎日1~2時間の残業をしています。40歳以上の社員は会社優先で、10時ごろまで働いているようです。

私   : 若手と中堅以上では残業時間が違うのですか?

中川さん: 若手は早めに帰ります。妻も総合職で夫婦共働きですから。課の若手は1人を除き、3人は共働きで2人は子持ちです。子どもをお風呂に入れるくらいのことはしないと。

私   : そうでしょうとも。

中川さん: 入浴は数少ない親子のスキンシップの場ですから。午後8時半ごろの入浴時間に間に合わせるには、7時までには会社を出ないといけません。30分ずれると、遅くなって妻が怒ります。

私   : わかります。

 ここで中川さんの家庭を理解してもらうために中川さんと妻との会話を、彼の話から再現します。

家事も子育ても協力が約束だった

中川さん: 仕事が忙しくって、これでも無理して、早く帰っているんだけど。

妻   : 私も、総合職だから、周りに気を使いながら早めに帰宅しているのよ。

中川さん: わかっているよ。

妻   : 理解していない。結婚する前に、私も総合職だから、家事も子育ても協力しましょうって、約束したでしょう。

中川さん: したよ。

  (夫婦2人とも語気が鋭く、激しくなっています)

妻   : 家計は銀行の共通口座に同じ額を振り込んでいるよね。平等にしたいからよ。それなのに、子どもの入浴時間に間に合わない日が最近多いよ。

中川さん: すまん。いま、職場でトラブルがあって、その処理で全員が居残りなんだ。わかってくれ。

妻   : そんなことなら、私だって同じ。

中川さん: 俺は、どうすればいいんだよ。

妻   : 甘えないでよ!

職場の事情はあるけれど……

妻   : 食事や洗濯、掃除などの家事は私がしているんだから、子どもの入浴と保育園に送るのはちゃんとやってよ。

中川さん: わかるよ、君の言いたいことは。でも職場の事情もあるし……。

 (妻は感情的に)

妻   : それを言うときりがないのよ。自分の都合ばかり言って。あなたは、子どもがかわいくないの。

中川さん: かわいい、当然だよ。

妻   : なら実行してよ。

中川さん: わかった、するよ。

妻   : イヤイヤみたいね。

中川さん: します。僕も父親だからね。

妻   : すぐに実行してよ。

 再びカウンセリングに戻ります。

仕事と子育ての板挟み

中川さん: 若手3人で話し合って、課長代理にそれとなく話をしたのですが、40歳代に負担がかかると言われ、そのままうやむやになって。

私   : そうか。

中川さん: 悩みます。

私   : そうだろうな。

中川さん: 3人で話し合ったのですが、世代間のギャップだろうと。明らかにライフスタイルが違います。

私   : なるほど。

世代間ギャップは、妻が専業主婦と共働きの違い

中川さん: 40歳以上の先輩たちの奥さんは専業主婦なので、男は仕事に専念できます。でも、僕らは夫婦が平等だから、妻に一方的に家事や育児の負担をかけるわけにはいきません。

私   : なるほど、なるほど。

中川さん: 世代間のギャップはどうしようもない。妻のことを考えると、板挟みですね。

 (考えながら)

私   : 板挟み。妻の怒りが爆発しそう?

中川さん: 先生は、多くの人の面談をされていますね。何か、いい方法がありますか?

休日は夫が育児を担当するのも手

私   : 難しい問題ですね。休日は夫が子どもの相手をすると決めている人がいます。平日は、妻の負担は大きいですが、現状よりはましでしょう。

 (少し明るい表情になって)

中川さん: 平日は妻が中心に、休日は僕が。

私   : 平日でも、間に合う日は、早めに帰宅をね。お互いに疲れが残らないように。親の役割も重要ですからね。

中川さん: 妻と再度、話し合います。

【あわせて読みたい】ワンオペ育児の妻の不満と、理解していない夫

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natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)

 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会元理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」ウェブ書籍「メンタル・キーワード療法~5分でできる簡易セラピー」。
夏目誠の公式ホームページ」「精神科医マコマコちゃんねる - YouTube

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7件 のコメント

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では、こなせない業務は誰が?

女性2

中川さんが早く帰ることで、残った業務は誰が遂行するのでしょう。業務量の総和が減らない限り、ほかの誰かがその分を負担するわけです。育児ないし介護で...

中川さんが早く帰ることで、残った業務は誰が遂行するのでしょう。業務量の総和が減らない限り、ほかの誰かがその分を負担するわけです。育児ないし介護での休職や時短を全員が公平に享受するのなら問題はない。しかし現実には、享受できない人もいるわけで、不公平感が募るのは当然ではないでしょうか。ですので、育休や育児に伴う時短勤務に際しては、休暇や時短を取得した本人ではなく、その部署のほかの社員に対してカバー手当が支払われるべきではないですか。

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会社が解決すべき問題で家庭の問題ではない

かてい

現実的に対応していくには、と前置きはあるものの「基本は夫婦二人の話し合いしかないようですね」という結論には違和感しかありません。ベテラン社員側に...

現実的に対応していくには、と前置きはあるものの「基本は夫婦二人の話し合いしかないようですね」という結論には違和感しかありません。ベテラン社員側には非がなく、若手社員の家庭内で解決すべき問題と捉えているようにも読めます。会社全体で働き方を変えていかなければならないという大きな流れの中、旧来の働き方を是とするベテラン社員側の意識を変える、残業しないと仕事が回らないのなら人員を増やす、といったことを会社がやるべきで、育児などの事情がある社員の家庭がしわ寄せを受けるべきではありません。

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残業は拒否してもよいのでは?

家庭の復権

残業を前提とした職場風土を容認する夏目先生の姿勢に違和感があります。女性の社会進出で家事労働力が減少した分、男性の家事労働シフトは避けられません...

残業を前提とした職場風土を容認する夏目先生の姿勢に違和感があります。女性の社会進出で家事労働力が減少した分、男性の家事労働シフトは避けられません。そのような情勢を踏まえ、産業医は、会社に対し、仕事が定時で回る事業運営を行うよう働きかけることが大事だと思います。労働基準法は、労働時間を原則として1日8時間、週40時間までと定めているはずです。家庭から家事労働力を引き抜いて女性の雇用を進めているにもかかわらず、残業に依存せざるをえない会社自体が、産業医の是正勧告の対象ではないでしょうか。

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